2012年5月22日火曜日

関税暫定措置法第8条(通称:暫8)の話:その2歴史

週末に更新しようと思っていたのですが、会社に資料を忘れてきた為できませんでした(-_-;)
そんなこんなで今回は暫8の歴史から入りたいと思います。

加工再輸入減税制度については昭和44年に当初は機械類の加工を対象に創設され、その後平成元年に織物製衣類(HSでいうところの62類)を対象として、初めて繊維製品の減免税制度が導入されました。とは言っても当初は輸出を認められる品物はかなり制限されており、委託加工の内容についても、既に裁断されている生地やボタンなどの付属品を縫製、取り付ける工程に限定され、今では許されている生地の裁断などもできない制度でした。
当時は輸出の申告時に生地だけではなく、全ての付属品を封印して、輸入時に加工された製品と封印された物を見比べて、税関は同一性の確認を行っていました。先輩方に聞いたところによると、始まった当初は輸出申告から許可まで2~3週間も必要で、また輸出する全てのアイテムを封印するということで、かなり苦労されたということでした。

以後順次加工制限の緩和や輸出の対象品目が拡大され、平成14年度にニット製衣類(61類)の追加、海外ストック取引(ストック暫8:今で言う関税暫定措置法施行令第22条第2項ただし書き)が整備され、微調整を重ね現在の制度へとつながっています。

この制度を用いて主に輸出入されている製品は圧倒的に61類、62類の編物、織物の衣料品です。
革製品なども一部制度の対象となっていますが、あまり利用されていないように感じます。

2012年5月17日木曜日

関税暫定措置法第8条(通称:暫8)の話:その1制度の概要

取るに足らない話が続いたのでここらで実務の話もしてみたいと思います。

通関業者でアパレルを扱っているのであれば、表題の関税暫定措置法第8条(通称:暫8)について、見聞きしている方もいるかと思われますが、今回はその話です。

予備知識として関税暫定措置法第8条とは、加工再輸入減税制度のことを指し、日本から外国へ原材料を輸出し、輸出許可の日から1年以内に製品として輸入される場合、製品に係る原材料価格相当分(いわゆる材料費+輸出にかかる経費(除く消費税))の関税を軽減する制度のことを指します。
減免税の対象となる製品は、革製のかばんや財布、服などの繊維製品、革製履物の甲、革製の自動車用腰かけの部分品があり、輸入するそれぞれの製品について使用できる原材料に決まり(縛り)があります。

この法律の趣旨としては、現在アパレル製品の輸入については、食品や汎用製品などと同様に国内産業の保護の為、おおよそ7~12%程度の関税が課されています。
しかし、諸外国特にアジアの人件費は日本とは比較にならないぐらい安く、また途上国においては経済の発展の初期段階として、多くの雇用を生み出すアパレル産業は重要な産業となることもあり、これ以上の関税を課すことで日本国内産業を守るのは難しい状況となっています。
そうした競争力の観点から日本では縫製工場の数が減り、縫製工場が減ることにより原材料となる生地や糸を提供する各企業の競争力まで削ぐことになる、そこで苦肉の策として考え出されたのが今回主題となる加工再輸入減税制度=関税暫定措置法第8条です。簡単に説明すると日本から輸出された原材料を使って、委託加工貿易を行うことで、その原材料分については関税を減税しますよ、という制度となっています。つまり日本の縫製工場は保護することはできないが、機能性繊維などの技術においては世界最先端の技術を持つ、日本の繊維産業を保護する為の法律とも言えます。

皆さんが買っている服の中にもこの暫8を用いて輸入された製品がありますが、タグの原産国表記については、縫製など最終的に製品にした国が表記されることになっている為、見分けることはできません。ただ、女性用の衣類やビジネススーツ、スポーツ用の多機能衣類やボタンや裏地、現地での入手が難しい物などは日本から輸出され、製品として輸入されることが多いようです。もちろん暫8を用いずに日本から原材料を輸出し、現地にて加工後通常輸入の形で流通している商品もあります(むしろこちらが主です)。

今では二国間や多国間でのEPAを用いることが増えてきましたが、現在日本にとって最大の貿易相手国であり、世界で最多の縫製工場を持つ中国との間にEPA等の締結がなされていないこともあり、まだしばらくこの暫定法は延長されると考えられます(2012年5月現在、2016年3月31日まで)。

2012年5月14日月曜日

通関士のこれから

通関士の未来について、先の事は誰にも分かりませんし、自分が今まさに通関士としてサラリーをもらっている為、贔屓目になるかもしれませんが、それも踏まえながら通関士としてこれから先の事を書いていきたいと思います。
通関士という仕事はこれから減っていく、若しくはなくなるのか、それとも職域が広がり更に発展していくのか、これは私の予想ですが、通関士の数は微減~現状維持しながらも職域を広げていくのではないかと考えています。

通関士の数が減っていく、即ちマイナス面に影響するのが、貿易の量の減少です。現状不況不況と言いながら長い目で見れば若干右肩上がりの昨今の貿易統計ですが、成長著しい東南アジアの台頭、日本の人口の減少など、輸出主体の経済活動が減っていくことは避けられないとでしょう。
通関業者の仕事は受動的な仕事である為、貿易量の減少は売上の減少に顕著に結びつき、その為現状でも通関業者の人員は少人数でやりくりしているのですが、顧客の奪い合いによる過当競争の結果として営業利益の減少なども重なり、更なる人件費削減の方向へ繋がるのは容易に想像できます。
またこれからは通関業者の合併、解散も避けられないのではないでしょうか。更にMOL、NYKなどが参加するアライアンスの航路再編に伴い本船の寄港地が減ることにより、地方港の通関業者などは特に厳しくなるものと思われます。

プラス面としては、税関自体が職員数を減らしている傾向もあり、更に通関士の数も減るとなると税収の2%を占める関税の収受、日本の経済指標となる貿易統計の質に影響し、経済活動へ悪影響を引き起こすことになるので、そういう点で一定数の通関業者及び通関士は必要になります。
人によってはEPA、TPPなど二国間、多国間の貿易協定により、極端に言うと関税がなくなることで通関士の仕事もなくなるという方も居られますが、そのような事は絶対あり得ないと断言できます。
アジアを中心としたEPAの進展によって輸入時関税がかからない事例は確かに増えてきております。しかし、通関士が行っている仕事は関税が有税だろうが無税だろうが全く変わりません。現状関税の有無に関わるのは、HS CODE、輸出国、特恵受益国、2国間及び多国間経済協定及び特殊関税(報復関税etc)などですが、通関士が行うのはそれら税番を適切に選択することであり、その後の細かい計算はNACCSがしてくれます。
逆に昔よりも貿易のやり方が多様化したことで、通関士に求められる知識は膨大なものとなっており、個々の通関士の質を高めることが今以上に求められることになるでしょう。

また通関士は通関業者に留まらず、商社や国際的な物流企業でも力を発揮する日がやってくるでと思います。輸出入の通関業務は今後通関業者を通さず、荷主自身で申告を行うことが増えてきます。これはAEO制度や昨年の保税搬入原則の改正などに見られるように、特に輸出において内陸地の拠点や倉庫を意識した法整備が進められていることからも明らかです。荷主の側も物流コストを以下に削るかを常に意識しているので、通関件数が多い荷主にとっては、自社通関をすることはコストカットに大きなプラスになります。そうなると通関業務の専門家である通関士経験者が、NACCSを用いて税番の選択や諸々の手続きを荷主の立場として行うようになるのではないかと思います。

いろいろと書いてみましたが、通関士の仕事は今後更に専門性を増し、通関業者に雇われる通関士としてはある程度の需要を満たし、荷主にとっては通関業務に詳しい人材がコストカットとコンプライアンスの遵守につながることで、必要性を増すと私は考えております。
望むべくは景気の回復と、輸出入の均衡を保ちつつ貿易量が増えていけば良いのですが、こればかりは考えたところでどうすることもできないので、日々研鑽しつつ、どのような状況でも必要とされる通関士としてのスキルを身に付けたいですね。

2012年5月3日木曜日

通関非違について

通関業者と通関士の実力を測る指標として、「通関非違発生率」というものがあります。

通関非違とは、輸出入の申告時に税番や数量の誤りや、タイプミスなどにより発生する通関業者及び荷主より受け取った書類の等の間違いが原因で発生する誤りのことで、毎月税関により集計され、後日「非違発生件数/率」として配布されます。

管轄税関によって非違発生率の伝え方は多少違うようですが、官署内の全ての通関業者の申告件数と非違の発生件数を計算することで、全体の非違発生率の平均を下回る通関業者は特に問題は無いのですが、非違の発生件数が継続的に平均を上回る通関業者には、税関より改善などの指導が入ることもあります。

この通関非違は区分2(書類審査)、区分3(開品などの貨物検査)に対し発生するのですが、本年度の実績評価の実施計画(関税局・税関関連)に気になることが記載されていたので紹介したいと思います。

http://www.customs.go.jp/seisakuhyouka/H24keikaku/file/5-3.pdf

リンクの2枚目になるのですが、

「審査・検査における非違発見件数」を設定し適正な申告を確保するための取組み状況を測定します。24年度の目標値は、過去5年の非違発見件数の平均件数より増加させることとします。

と書かれており、つまり申告時の書類審査、貨物検査を重点的に行うことで、非違の発見件数を過去5年の平均件数との比較で増加させるとあるのですが、通関業者が努力して減らそうと日々努力していても、このような取り組みを行うということは、重箱の隅をつついたような非違で件数を増やそうとするのが目に見えています。

通関業者は書類の作成、入力、チェックと2人以上が同じ書類に目を通すことで間違いを減らすようにしている業者が多いと思います。しかし、書類によってはインボイスのページが20ページ以上、項目が数百アイテムにのぼるものもあり、このようなものは作成した内容を全てチェックすることは不可能です。
これは税関も同じで、輸出入ともに通関業者は本船のスケジュールに合わせほぼ同じ日時に申告を行っていますが、この申告のタイミングが重なることで税関でも審査書類が溢れ、全てに目を通し適性に申告がなされているかをチェックすることは現状時間的にも人員的にも不可能です。

そうなるとどのように限られた時間内に許可を得ているのかと言うと、詳しくは書けませんが、これは締め切りに合わせて通関士と審査担当の税関職員との阿吽の呼吸で行われているのが現状です。

しかし、今回このような指針が出たことで、平均値より非違発見率が低い税関職員、通関部門はなんらかの指導がなされるのではないか、非違の発生件数を上げる為、今までより書類審査に時間がかかるようになるのではないか、貨物の検査時に細かい数量まで念入りに見るようになるのではないかと考えられます。

通関非違はタイプミスのような軽易なものでも、税番間違いのような重大なものでも等しく1点として計上されます。
上記のような取組を行うのであれば、保税のように非違の内容別に点数を設けて、通関業者と通関士にとってより改善点がはっきりと分かるような基準を明確にしてもらいたいと思うのですが、実際問題どう運用されるか今年度は注目していきたいです。

2012年4月28日土曜日

繁忙期終了

今年もゴールデンウィーク前の繁忙期が終わりました。
扱っている物にもよりますが、このゴールデンウィーク前と、お盆の前それからクリスマスの週が我々の業界の繁忙期です。
AIRだとボジョレーとかもあるみたいですが、この時期は休みの為カット日が軒並み前倒しになるので普段の3倍以上の仕事を連日こなすことになります。

場合によっては日が変わるまで仕事をすることもありますが、今年に関しては例年程ではなかったです。まだ2日残っているので油断は禁物ですが、ひとまず3連休ゆっくり過ごそうかと思います。

2012年4月23日月曜日

税関と通関士

今回は通関士として働く上で毎日のようにやり取りする事になる税関について、身近な所で紹介したいと思います。

通関士の日常業務は、主に荷主より委託された貨物の輸出入の申告ですが、その申告が正しく行われているかどうかをチェックするのが税関の重要な役割の一つです。

輸出については、貿易統計の材料となる統計品目番号や数量、金額が正しいか、輸出貿易管理令や他法令に関わる貨物かどうかの確認を行い、輸入については言わずと知れた適正な関税、消費税の徴収や、EPA、暫定8条等減免税の審査を通関業者から提出された書類を元に行っています。


NACCSを用いて輸出入申告を行い、

区分1=即時許可
区分2=書類審査
区分3=貨物検査

の区分が出ると、区分1の即時許可以外は税関窓口に書類を提出し、税関職員に申告内容が誤っていないか確認を受け、特に申告内容に問題がなければ許可になります。
この書類審査や貨物の開品検査を行うのが我々通関業者が一般的にラインと呼んでいる税関職員です。ほぼ毎日のように書類の内容について質問に答えたり、ちょっとした間違いを訂正する際にお世話になっています。

またラインでは解決できない込み入った問題を相談する統括部門、X線検査時の検査部、コンテナヤードに搬入したコンテナ貨物や、保税区内に蔵置された貨物についてなんらかの理由で動かしたり、中を見たり、サンプルを持ち出す際に調整を行うには保税部や監視部と、新商品などで実績が無く税番がはっきりとしない場合は関税監査官、EPAや特恵税率適用の為の原産地証明書や原産地基準の確認を行う原産地調査官、最近ではAEO専門の部署も整備され、時と場合によって話をする部や担当官が違います(上記の部門は港によって多少違います)。

また例年税関では7月に人事異動があり、どの職員も2~3年周期で他部署へ異動する為、例年この時期前後で審査の傾向が変わるのも悩ましいところです。
税関職員も通関士も法の下に荷主より委託された貨物、書類を審査しているのですが、法に明確に記載されていない事項や細部については、その税関職員の匙加減というのが実情です。
また通関業者は税番についても同じ品物でも港や申告官署によって違う税番を用いたり、その申告官署の傾向に合わせ税番の使い分けをしています。

と言うのも、申告書類の間違いを税関に指摘され訂正を行うと"非違・誤謬"としてカウントされ、件数によっては税関より改善命令を出される為、どの通関業者も1件でも訂正の件数を減らそうと日々努力しています。

通関士の専門性とは何か?との問いに対し、対税関との折衝という答えはどの本にも書かれていませんが、私はこの折衝能力は優秀な通関士の条件だと思います。

2012年4月16日月曜日

閑話休題

このブログは主に通勤中の頭が冴えている時に書いています。
最初の方は頭に入っている知識でもネタをポンポンと書いていけたのですが、内容が込み入ったものになるとそういう訳にもいかず、いろいろと下調べをして時間のある週末に更新しています。
あんまり詳しく書き過ぎると、話が長くなりますし、また自分自身そこまで深く書けるだけの能力もない為、内容的には中途半端なものになってる感もありますが、とりあえず続けて書き綴るのを目的としているので、今は頭の中に入っている物を定期的に書き続けて、それが出し尽くした後に新しい知識をインプットして、吐き出すことを繰り返す事で新しい知識を身に付けようと考えています。
そういう訳で、話のタイトルに一貫性がなく、内容も中途半端な感がありますが、コンテンツが十分に貯まったら内容を整理してホームページなどの形で紹介できればと考えています。

そういう訳で、お見苦しい部分もあるかと思いますが御容赦下さい。
また何かご意見、ご感想などがあれば、メール頂けると幸いです。

できるだけ長く続けたいと思っているので、ほそぼそと末長くお付き合い下さい。

2012年4月15日日曜日

通関士の毎日

通関士の毎日の仕事は、どこも大体そうだと思うのですが、未経験の方が想像しているようなものに比べとても地味なものです。
シャーペン片手に物差しを書類にあてて、税番毎に区切り、数量や金額を計算し、NACCSへ入力、入力内容を確認して輸出入の申告を行う、毎日がほぼこの作業の繰り返しです。
会話する相手は税関のラインと呼ばれる部門の担当者か社内の営業で、お客さんと話す事もあまりありません。また、人の少ない通関業者では、通関士がコンテナドレージの手配や、D/Oの差し入れをする事もあります。

こう書いてみるといかにもつまらなそうな仕事に見えるのですが、この仕事の魅力は何と言ってもその奥深さにあると思います。一度書類を手にすると少なくとも申告書の作成までは自分一人でしなければなりません。そしてその申告書作成のスピード、正確さが明確に自分自身の能力を反映し、他の通関士との比較材料にもなります。
しかし、ただ早いだけでもいけません。関税法や通関業法、輸出貿易管理令、食品衛生法、高圧ガス法...etc、輸出入を円滑に行うには、膨大なあらゆる法知識が必要であり、また統計品目番号の決定には、細心の注意を払い決定することが必要とされます。


また法律は毎年のように大小改正される為、常に最新の法知識を頭に入れておかなければいけません。2国間のEPAが発行になるたびに、原産地規則は?、デミニマスルールの適用は?など他国との細かなルールの違いを知らなければ、いざという時大変な失敗をしてしまいます。


知識と経験とスピードと正確性、個の力は間違いなく大事なものですが、良い仕事をしていくには個の集合体のチームの力が絶対不可欠となります。一人で分からないことも皆で考える中で答えを導くことができますし、例え答えが分からなくてもなんらかのヒントを得ることはできます。

通関士は毎日の繰り返しの仕事の中で、ちょっとした発見を積み重ね経験を積んでいきます。
こうした平凡な積み重ねと繰り返しの仕事が明日の糧となる、皆が皆そう思うとは限りませんが、少なくとも私はそういう風に日々仕事に取り組んでいます。


2012年4月7日土曜日

AEO制度について

今回は近年財務省も力を入れているAEO制度についてです。

AEOとはAuthorized Economic Operatorの頭文字を取ったもので、諸外国と共に日本も力を入れている制度です。今のところ、

・特例輸入者
・特定輸出者
・特定保税承認者
・認定通関業者
・特定保税運送業者
・認定製造者

の6者があります。

特例輸入及び特定輸出制度は荷主を対象としており、以下、
特定保税承認者・・・保税倉庫
認定通関業者・・・通関業者
特定保税運送業者・・・運送業者
認定製造者・・・生産者

を対象とした制度です。

毎年のように制度について大小の変更がなされ、受験生泣かせの制度でもあります。
2012年の4月からは特例輸入者の保全担保の提供について、大幅な緩和措置が導入され条件を満たす大企業を中心に取得が進んでいくのではないかと思われます。

しかしながらそれ以外のAEO制度については、取得するまでの労力に比べ、まだまだ魅力に乏しいのが実情です。以下は個人的な見解。

・特例輸入者
AEOの中で一番メリットを感じられる制度です。何といっても輸入時に納税と切り離して貨物を引き取ることができる引取申告が魅力です。
引取申告とは納税申告と輸入申告を切り離して行うことができるもので、税額を確定するのに必要な評価書類などが揃っていなくても輸入することができます。引取申告をした際の納税申告の期限については、引取申告をした翌月末までとなっており、この期限を過ぎるとペナルティがある為、通常は引取と納税を同時に行うことが多いです(ほとんど区分1:即時許可となります)。
先に書いたように今まで多くの特例輸入者が保全担保を積んでいたのですが、この4月からの改正で条件が緩和され、担保を積まなくても申告できる企業が増えました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e
http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/h_tanpo.htm

・特定輸出者
保税地域に搬入することなく輸出許可を受けることができる、特定輸出申告制度がメインです。
主に自社倉庫、工場でのメーカーバンニングが対象とされていると思われます。
保税地域に搬入前に許可を受けることができますが、リードタイムにそれほど影響が出るのかというと???です。X線検査が減るぐらいと思われますが、特定輸出者を取れるぐらいの企業であれば、検査率も少ないでしょうし、年間で見てもどれぐらい差があるか疑問です。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e2
・特定保税承認者
税関長への届出だけで保税蔵置場を設置できる他、手数料の軽減、包括的な許可を受けることができるということで、保税倉庫を持つ業者で取得が進んでいます。

http://www.customs.go.jp/hozei/cp/index.htm

・特定保税運送業者
保税運送の個々の承認が不要、後述する特定委託輸出申告の貨物を運送することができます。
2012年4月の段階で全国で3社しか承認されていません。
この業界の特徴として、トラックにしてもコンテナにしても傭車を使うことが多く、多くの下請けを使っているので管理がなかなか難しいということもありますし、正直メリットが感じられません。

http://www.customs.go.jp/hozei/transporter/index.htm

・認定製造者
2010年から導入されていますが、取得したという話を聞いたことがありません。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/maker.htm

・認定通関業者
2012年の3月時点で全国で47者が認定されています。通関業会からの働きかけもあって、最近は条件を満たす通関業者の取得が進みつつあります。
メリットとしては3点あり、

1.特定委託輸入ができること
2.特定委託輸出ができること
3.申告関所の選択ができること

の3点です。

1の特定委託輸入は特例輸入制度の通関業者バージョンで、荷主が特例輸入者でなくても、引取申告など特例輸入申告と同様の申告ができます。
ただなんでもかんでも使える訳ではなく、リスクの割に通関業者にとってのメリットに乏しい為ほとんど使われていないようです。

2の特定委託輸出申告も上記と同様、特定輸出者と同様の事ができます。
しかしこちらの方は、貨物の運送を特定保税運送者にお願いしないといけないのですが、先程も書いたように全国で3社しかないため制度はあるが使えない制度となっています。

3の申告官署の選択制度は、通関業の許可を受けた本関管轄内で、予め届け出た本関及び近隣の税関中から申告官署選択し、その選択した官署で書類審査や貨物の検査などを一貫して行う事ができる制度で、同じ管轄の税関内であれば、営業所近くの税関を選択する事で、離れた場所にある税関へ行かなくても書類審査などができるようになります(ただし他官署にて開品検査を行う際は、書類審査を行った税関職員と共に他官署の開品検査場へ出向く必要があります)。
通常通関業者は税関の書類持ち込みや検査の為に1〜2人、外回り要員がいるのですが、その負担を減らす事ができる為、営業所の近くに税関がある場合、そのメリットも大きくなります。
実際航空貨物においては、成田と羽田にそれぞれ事業所を置かなくても、申告する事ができるようになったことで、大きなメリットを感じられるようになりました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/broker/index.htm


以上が現在の日本のAEOの概要ですが、まだまだ魅力に乏しいのは税関も分かっており、毎年聞き取り調査を行って制度の改善を図っているようです。

近年アメリカを筆頭に外国から入ってくる貨物の検査、取扱を厳重にする取り組みは日本を含め、諸外国の間に広がってくると思われます。このような場合AEOの相互認証を活用することによって、AEO取得者の貨物は簡易的な審査で済ますことができるようになることが予想されるので、ある程度体力のある会社ではAEOを取得する動きは今後活発になってくるものと思われます。


ちなみに認定通関業者からは、申告時に区分3が出た場合の検査率の低減と、区分2の書類審査の簡素化が要望されていますが、この先どうなる事か、ますます受験生を悩ますことになりそうです。

2012年3月30日金曜日

関税・消費税立替問題その2

通関業者による関税・消費税立替問題の続きです。

長い間輸入時の関税・消費税の支払いは、NACCS口座を用いて行われてきました。
しかしこのNACCS口座というものは、前回説明したように前日までに入金した分しか口座に反映されません。輸入時の関税額は通常申告の直前にはっきりとした金額が分かるものなので、その時にもし口座の金額が不足していれば、例えその日に入金したとしても納税できるのは翌日になります。
荷主が扱っている商品にもよりますが、通常港に到着した貨物はできるだけ早く手元に持ってきたい、エンドユーザーへ納品したいというのが一般的で、時間制限無しでゆったりと通関、配送ということは稀です。
またNACCS専用口座というものは専用と言うだけあって、他の用途に使用することはできません。
手元資金に余裕の無い中小企業にとって、貴重なキャッシュを口座に常時用意しておくと言うことは非常に大きな負担となります。

そういう状況の中、次第に通関業者自身が自らNACCS口座を開設し、輸入申告時にかかる関税・消費税を一時立替、後日請求するという形が通関業者間の激しい顧客争奪の競争の中、提供するサービスとして一般的になり、現在までに至るのがいわゆる関税・消費税の立替問題です。

現在リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)の登場によって、上記のようなNACCS口座の持つ問題はクリアされました。
しかしこれとは別の理由で通関業者の立替問題は一向に改善されてないのが現状です。
その別の理由とは、単純に荷主の利便性、経済性の問題であり、つまり通関業者に関税・消費税を一時立替させることで金利負担を無くし、且つ手元資金を減らすことなく商売をすることができるのですから、その権利を自ら失うようなことはしたくないというのが荷主の本音です。
特に中小企業においては関税・消費税を立替することを条件に通関業者に仕事を回すということが当たり前のようになっています。

私たち通関業界の人間はこの問題を当たり前のようにあるものだと認識しています。しかし、よくよく考えてみると納税者に代わり税金を立て替えるという行為は当たり前のことなのでしょうか?

日本通関業連合会の調査によると、通関業者の立替金額は年額1兆円上ると推計されており、金利の負担、貸し倒れリスクなど通関業者に与えている影響は非常に大きなものです。
実はこの他にも通関業者が立て替えているものは多く、海上運賃、倉庫での荷役費用、トラックやコンテナの配送料など請求書にのる項目の多くは立替費用です。

ここまでは古くからある問題です。今注目されている新しい問題とは、今国会でさかんに議論されている消費税の問題です。
消費税が上がるということは、通関業者が立て替える費用が上がるということにつながります。この景気後退の昨今、立替費用の増大は中小通関業者にとっては死活問題足りえます。
政府はこの問題に対し、民間での契約ということを盾に介入しようとはしませんが、元はと言えば制度の不備が引き起こした問題なので、あるべき姿にするのが立法を行う政府としての役目ではないのでしょうか?

一部の大手業者は立て替える際に手数料を請求したり、立替そのものを拒否し、ダイレクト方式へ切り替えさせるなど行動を起こしているようですが、この問題は業界が横並びで行動を起こさなければ、改善することは難しいのではないかと私は思います。

2012年3月29日木曜日

関税・消費税立替問題その1

今回は古くて新しい話題でもある通関業者の関税及び消費税立替の問題についてです。

過去から現在に至るまで、通関業者を悩ませている大きな問題の一つがこの立替金の問題です。
輸入の許可を受けて外国貨物を引き取るには、輸入者は必要とする関税・消費税を納付するか担保を積む必要があります。近年特例輸入者による貨物の引取りと納税を分離して行える、特例輸入制度もありますが、今回の主題から外れるのでひとまずおいておきます。

基礎知識として関税・消費税の支払い方法について簡単に整理してみます。

2012年現在輸入時の関税・消費税支払い(担保)方法には下記の様なものがあります。

1.銀行、税関収納窓口への証券(小切手、国際の利札、郵便定額為替など)の提出
2.NACCS専用口座による引き落とし
3.延納(個別、包括、特例)、許可前引き取り承認制度(BP=Befor Permit)などによる担保の提供
4.MPN(マルチペイメントネットワーク)
5.リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)

1については輸入申告時に関税・消費税が確定すると、関税額・消費税額が記載された納付書を発行することができるので、この納付書と共に記載された金額を銀行へ収めるか、税関収納課に証券を添えて提出することで納税することができます。
個人輸入などではほぼこの方法での納税になります。申告の度に銀行、税関を行き来することになるので、通関業者においては緊急の場合を除いてほとんど利用されておりません。また税関収納課への直接の納税は、海貨においては私の知る限りかなり嫌がられます。

2の専用口座については、輸入者が事前に銀行に開設したNACCS専用の引落し口座から関税・消費税を納付する方法です。輸入申告の際NACCSに専用口座の番号を入力することで、輸入申告→審査終了後即時許可になります。
デメリットとしては、開設した銀行によって利用時間に制限がある(最大21時まで)、前日までの振り込みしか口座残高に反映されないなどがあります。

3の延納については、ある程度の資本がある会社は導入している方法です。ここでは包括延納方式について説明しますが、事前に担保を積むことで許可の日から3カ月後の末日まで関税・消費税の納付を延長することができます。使用方法は2の専用口座と同様にNACCSに必要事項を入力することで使用できます。
デメリットは担保を積む必要があること、担保額の上限を1円でも超えると使用できない(この場合納期限を延長している関税・消費税を納付することで使用できるようになります)などがあります。

4.MPNは比較的新しい納税方法で、輸入申告後に確定した関税・消費税の税額を通関業者が輸入者に連絡し、輸入者が必要金額をインターネットやATMなどで納付することで納税する方法です。
デメリットとしては、輸入者は通関業者などから納税に必要な金額の連絡を受け、自らインターネットなどを通して納付する必要があり、輸入件数が多いとそれだけ煩雑になります。

5.リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)は一番新しい納税方法で、事前にNACCSと銀行で口座振替契約をすることで、一般の口座からその都度関税・消費税の引落が行われます。4のMPNと比べ、残高があれば自動的に納付されるので手間を省くことができ、2の専用口座に比べても、口座に必要な残高が残ってない場合でも振り込みを行うと、通常の口座なのですぐに残高に反映されます。
今のところ一番使いやすい方法です。


以上が基礎知識で、ここからが本題になります。

少し長くなったので次回へ。

2012年3月25日日曜日

海貨業者について

通関業を営んでいる会社はフォワーダーとしても活躍しており、そのほとんどが航空貨物混載業者、利用運送事業者(NVOCC = Non Vessel Operating Common Carrier)を兼務しています。
他にも保税区内に自社倉庫を構え、主に自社及び関係会社の外国貨物を取り扱う会社もありますが、ここでは私も所属する海貨業者について説明したいと思います。


まず海貨業者の意味について説明します。
海貨業者とは1951年に制定された港湾運送事業法に第2条の1に定義された一般港湾運送事業の"海運貨物取扱業"(荷主の委託を受けて行う個品限定運送)を略した物です。
簡単に言えば自らの責任で荷主⇔船社の貨物の受け渡しをする業者(元請け)のことを指します。
元々この法律はコンテナ化以前の在来船を対象にしていた為、艀(はしけ)などを利用しない、コンテナ船が主となってからは、1969年に港湾運送事業法が改正され、船社の貨物も扱えるようになり現在の海貨業(新海貨)の形態が整いました。
この上記貨物を取り扱うには海貨業のみでは一貫して行うことは不可能なので、多くの海貨業者が通関業、倉庫業、貨物利用運送事業の許可を受け、輸出入の仕事に携わっています。
またこうした業務を行う海貨業者を"乙仲"と慣例的に呼ばれております。

海貨業者がやっている仕事には下記のような物があります。

1.通関業
2.国際輸送業務、国際複合輸送業務
3.代理店業務
4.国内の運送業務
5.書類作成代行業務

などなどです。以下説明していきたいと思います。

1.通関業
他の所で説明しているので飛ばします。

2.国際輸送業務、国際複合輸送業務
荷主に代わり船社にBOOKINGを行い、B/L発行など自らの責任で外国との貨物輸送を取り行うNVOCC(利用運送事業者=船を持たない海上輸送者)業務の事。細かい部分はまた後日説明したいと思います。

3.代理店業務
外国の船会社、NVOCCと提携し貨物到着後のARRIVAL NOTICE(貨物到着案内)を発行し、運賃や到着後の取扱料を収受する業務です。

4.国内の運送業務
輸入許可を受けた貨物を保税区からエンドユーザーに配送したり、輸出許可後のコンテナ貨物を保税区からコンテナヤードに搬入したり、許可後の特定輸出申告貨物をコンテナヤードに搬入するまでの運送業務を荷主に代わり手配します。

5.書類作成代行業務
L/Cの銀行買取書類(ネゴ書類)を作成したり、荷主に代わりINVOICEやドックレシート(DOCK RECEIPT)の作成、商工会議所へ原産地証明書の発行などを行います。

ここにあげたのは多くの通関業者がやっている一部の仕事です。他にも検疫に必要な検査の手配を行ったり、展示会用のATAカルネの作成などその海貨業者が得意とする仕事を荷主に代わり行っています。
先に書いたようにほとんどの業者が通関業だけでは経営していくことは難しい為、今では通関業以外の業務で利益を上げられるよう水面下で戦いを繰り広げています。

しかし、そういう時代の流れでもなお通関業務は、各海貨業者の重要な業務となっています。
特に食品、化学、繊維など経験と深い知識が求められる分野の通関士が社内にいるいないでは、扱える貨物に制限が出ることもあり、優秀な人材は引く手数多なのが現状でもあります。

そういう私も諸先輩方のように知識と経験を日々磨き、積み重ねていきたいものです。

2012年3月19日月曜日

通関業者の役割:後編

それでは引き続き個人での輸入手続きについて。

1については同様です。

2.インボイス、パッキングリスト、B/L、ARRIVAL NOTICEを手に入れ、必要であれば保険証券も手に入れることができれば書類の準備は完了です。

3.上記の書類を揃えて、到着した貨物の輸入地を管轄する税関へ赴きます。

4.税関で用意される書類に必要事項を記載し、発生する関税、消費税を計算します。また必要であれば税関によって荷主立会いの元、検査が行われます。

5.関税、消費税の計算が終わると、納付書という税額が記載された書類を渡されるので、国税の収納ができる銀行へ行き、必要な税を納付した上で、収納印を納付書に押印してもらいます。

6.持ち帰った納付書を税関の収納課へ提出すると…おめでとうございます。無事貨物は輸入許可になりました。
しかしまだやる事は残っています。

7.ARRIVAL NOTICEを発行した代理店に赴き、日本到着までにかかった費用と、必要に応じてB/Lのオリジナルを提出し、D/O(デリバリーオーダー)を発行してもらいます。

8.貨物の到着した倉庫に向かい、D/Oを渡し貨物を引取ってやっと貨物はあなたの物になりました。

取り引き形態によっても違いますが、おおよそこのような流れです。

流れを見ると自分でもできそうな気もしますが、実際は保険の掛け方、代理店の場所、貨物の引取り場所など、通関業者であればすぐ分かることも、個人ではなかなか調べることができません。
よくあるのは貨物が日本に到着しているが、代理店から連絡が無く、気付いた時には高額な保管料が発生していたなどです。
上記の手続きは個人でやると早くても丸一日、書類不備などトラブルがあれば一週間はざらに必要になります。

これでは余りにも面倒なので、我々のような通関業者へ業務を委託し、必要な手数料(取扱料10000円程度、通関料は定められた金額以内)を支払うことで手間と時間を節約するのです。

通関業者では貨物の到着後、倉庫で貨物が確認でき次第申告を行い、おおよそではありますが半日から一日程度で貨物を引取り配送することができます。

そういう訳で多くの企業は通関業者へ業務を委託することで、手間と時間を省いているのです。

通関業者の役割:前編

今回は通関業者が果たす役割についてです。

通関業者の役割とは、
輸出入する貨物に必要な手続きを、代行し荷主より手に入れた書類を元に、適切な数量、金額、税番、税率などを選択、計算し、税関へ申告を行うことにあります。
もちろん営業的、マネジメント的な役割を担うこともありますが、ひとまずそれは置いておきます。

では上記の仕事は自分でも出来るのかというと、もちろん可能です。
大抵の税関には個人通関の窓口を設けてますし、大手の企業などでも自社通関を行う所が増えてきました。

そこで一般的な海上貨物の貨物の到着から輸入許可引取りまでの流れを通関業者に委託した場合と、個人でやる場合に分けて説明したいと思います。

通関業者に委託した場合
1.輸出国の荷出人(SHIPPER)より貨物の船積みの完了連絡と共に、インボイス及びパッキングリストがメールやファックスで送られてくる。またB/L(船荷証券)がEMSやクーリエ(DHLなど)の業者を通じ荷主に送られる。

2.荷主は受け取ったインボイス、パッキングリスト、保険の明細などを業務を委託した通関業者に送り、更に貨物引取りに必要な量のB/Lのオリジナルを送付する。

3.貨物が輸入地に到着する前に、ARRIVAL NOTICE(貨物の到着案内及び請求明細)が送られてくるので、通関業者へ送付する。

4.貨物が輸入地に到着、通関業者は受け取った書類を元に税関への申告準備をし、同時にARRIVAL NOTICEの発行会社にB/Lの差し入れ、費用の支払いを行い貨物の引取り準備をする。

5.倉庫にて該当貨物の確認後、輸入申告。税関にて審査後、必要な関税、消費税を納め、輸入許可を受ける。

6.通関業者は荷主の指定した送り先に到着するよう配送車両を手配し、倉庫から貨物の集荷、配送を行う。

7.後日通関業者より立て替えた費用や請求書(海上運賃、手数料など)が送られてくる。

これを個人でやるとどうなるのかは次回に。




2012年3月16日金曜日

通関士の現場:年齢構成

今回は通関士の働く現場がどのような状態なのか、私の主観を元に紹介したいと思います。

先ずは年齢構成から

60〜50才
このぐらいの年齢の方も今なお現役でばりばり働いています。高度成長期の忙しい時代を支えた世代で、商品知識の幅は実際の経験に裏付けされたものがあり、中には輸出入のタリフが全て頭の中に入っているかのような凄まじい方もいます。
反面パソコンやNACCSは苦手で、NACCS連動の他法令や、入出力作業は中堅、若手に任せることが多いです。
定年退職に伴い知識の継承にどこの業者も頭を悩ませています。

50〜40才
管理職の中心となる世代です。特定の分野に強いプロフェッショナルもちらほらいます。
このぐらいの年代の方は油も乗り切っていろいろな場面で活躍されているのではないでしょうか。

40〜30才
私のような他部署から異動になった者や、入社から通関部一筋の人など、中堅から初心者まで幅広い人間がいます。多くの職場で実務の中心を担っている世代です。

30〜20才
通関士試験の合格率の低下、就職氷河期など不遇な世代です。
余り姿を見かけません(涙)

一概には言えませんが、多くの職場が団塊の世代退職に伴う知識の継承に頭を悩ませているようです。
その為欠員の補充にはどうしても経験者を選ぶ傾向はありますが、経験者、特にスキルの高い方はなかなか見つからないので、未経験者の方にも十分チャンスはあると思います。

ここで紹介したのは、私の主観なので参考程度にして下さい。
もちろんもっと若手が多い通関業者や逆に数年以上採用をしないで、限られた人間でやりくりしている業者もあると思いますので。

2012年3月15日木曜日

通関部に配属されてからのこと

前回通関士の確認について記載しましたが、多くの通関士が確認の前に、既に通関部で働く事になると思います。

そこで今回は通関部に配属されてから最初にやる仕事について書いていきたいと思います。

通関の日常業務はかなり大雑把に書くと、

1.申告書類作成
2.NACCSへの入力
3.申告控と実際の書類(INVOICE/PACKING LIST、他資料など)をチェック
4.申告
5.審査区分によって区分2(書類審査)、区分3(貨物検査)の場合は、税関へ書類を提出する。
6.許可

という流れになります。

初心者の場合まず任されるのは、このうち2と5にあたる、NACCSへの入力と税関への審査書類の持ち込み業務だと思います。
通関の仕事は限られた時間内にどれだけ早く且つ正確に申告し、許可を得る事にあるので、単純作業ではありますが、この二つの仕事は毎日の業務でも非常に重要なものです。
特にこれから通関士を目指そうという方は、ブラインドタッチができるよう事前に練習しておいた方が良いと思います。
もちろんブラインドタッチができるという事は、面接の際でも聞かれるので早く正確に入力できる方は、特別な知識がなくても即戦力の人材とみなされます。

2週間程度タイピングソフトで練習すれば形ぐらいにはなります。後はNACCSへの入力をし続ければだんだん早くなるので、苦手な方は練習して本番に備えましょう。





2012年3月13日火曜日

通関士の確認を受ける為に

通関士の試験に合格し、通関業者の通関部に配属されると晴れて通関士の確認を受ける...前にしなければいけない事があります。

それは各地の通関士部会が催す講習に参加する事です。
通関士部会については別の項目で詳しく説明したいと思うので、今回についてはさらりと説明しますが、各地の通関業者が参加している通関士の連合体の様なものです。

その通関士部会が開催する講習に参加し、修了書と共に次に挙げる必要書類を税関に提出することで、無事通関士としての確認を受ける事ができます。

必要書類
・通関士確認届(税関様式:B-1320)
・通関試験合格証書の写し
・身分証明書(各市町村で発行)
・登記されていないことの証明書(法務局で発行)
・履歴書
・宣誓書(税関様式:B-1080)
・写真2枚
この講習は通関士の確認を受ける人だけではなく、今まで何回か説明した従業者の方についても受講する必要があります。

内容については5日間9時〜5時まで、基本的なおさらいや、輸出入書類の作成方法、税関職員からの社会悪物品の統計や取締りの取り組みについての説明など、なかなか為になる内容となっております。

この講習の修了書と定められた必要書類を提出してから2週間程度で通関士証票が出来上がります。

ただし、この講習は通関士試験の合格発表後しばらくしてから催されるので、タイミングが合わず受講できない場合は、後に講習に参加することを条件に通関士として税関長の確認を受けることができます。

2012年3月11日日曜日

通関士試験の合格率について:後篇

前回3科目受験者の実際の合格率を計算してみました。

正直な話一部科目免除者と3科目受験者では合格率はもちろん、試験にかける時間なども考えると不公平な感じはします。ただ、この一部科目免除者は3科目受験者の競争相手ではありません。この人たちは違うステージに立っているという事実だけがあるのです。

1科目免除者は5年の従業者登録(または公務員特例)、2科目免除者は15年となっています。
この人たちはのほとんどは日常的に通関業務をこなしており、ある一定の水準の仕事をしている人たちです。例えその年の試験に受からなくても、次の年も同じ条件で受験することができます。
3科目受験者には、学生、通関業者への転職/就職を考える人、貿易関係職についている人、通関部に所属しているが試験に合格していない人、資格コレクターの人などなどいろいろな人がいると思います。
受験者の内のどれだけの人が日々試験に向けて学習しているかは分かりませんが、3科目受験者の実際の合格率は発表されているものより低いということを頭に入れて、日々の学習を進めていただければと良いのではないでしょうか。


通関士試験の豆知識その1
合格発表はweb官報が一番早いです。受験番号と氏名が合格発表当日に報告されます。
http://kanpou.npb.go.jp/

通関士試験の豆知識その2
2科目免除合格者の名前に注目すると、税関所長や税関長の名前を時に見つけることがあるかもしれません。

例年実務の最終10問題で合格数を調整しているようです。今年度はどうなることか、受験者の皆さんは法改正も踏まえ日々勉強に励んでください。

2012年3月10日土曜日

通関士試験の合格率について:前篇

通関士試験の合格率については、第40回(平成18年度)に回答方式が全てマークシートに変わってからは、

第40回:7.0%
第41回:7.7%
第42回:17.8%
第43回:7.8%
第44回:9.8%
第45回:9.9%

と、第42回を除いては軒並み10%以下となっています。
問題内容については記述式の時の方が難しかった、いや本来問題の難しさは変わっていないなど、過去の合格者やいろいろな通関士試験対策本やサイトで意見が出ていますが、受験者数が10000人辺りでこの合格率が続くということは、単純に過去よりも難しくなっているのだと私は思います。

しかもこの合格率は一部科目免除を受けた人も含まれており、3科目受験者だけの合格率を見ると更に数字は低くなるということを以前書かせていただきました。
では、具体的に3科目受験者の合格率はいくつなのでしょうか?

それでは2011年に行われた第45回の試験を解析してみたいと思います。
http://www.customs.go.jp/tsukanshi/45_shiken/45shiken_kekka.htm

受験者数:9131人
合格者数:901人
合格率:9.9%

これが発表されている数字です。では同ページに記載のある一部科目免除者の数字を抜き出してみます。

2科目免除:173人
1科目免除:606人

となっております。

ここでは一部試験免除者の合格率の数字は記載されていないので、以下の合格者の発表ページを参照してみます。
http://www.customs.go.jp/tsukanshi/45_shiken/45shiken_gohkaku.htm

合格者が受験番号順に記載されているのがお分かりかと思います。
よくよく注目してみると、1000番台、2000番台の受験番号は合格者の番号がつまっており、3000番以上は間隔が空いているのが分かります。

この内1000番台は、2科目免除者、2000番台は、1科目免除でそれ以上は3科目受験者ということが推測されます。それを元に各条件で受験した3者の合格人数が以下の通りになります。

2科目免除者:133/173名(合格率:76.9%)
1科目免除者:128/606名(合格率:21.1%)
3科目受験者:640/8352名(合格率:7.7%)

純粋に3科目受験者だけで考えると、7.7%という数字になりました。それと同時に2科目免除者の脅威の合格率がお分かりかと思います。

もう少し整理してみると、
一部科目免除者の合格占有率:261/901名(29%)
3科目受験者の合格占有率:      640/901名(71%)

ということが分かります。同様に45回以前の数字を計算すると、

第44回合格者数:929名(9.8%)
2科目免除者:167名(167/246名 合格率:67.9%)
1科目免除者:83名(83/571名 合格率:14.5%)
3科目受験者:679名(679/8673名 合格率:7.8%)

第43回合格者数:807名(7.8%)
2科目免除者:234名(234/321名 合格率:72.9%)
1科目免除者:107名(107/586名 合格率:18.3%)
3科目受験者:466名(466/9460名 合格率:4.9%)

第42回合格者数:1847名(17.8%)
2科目免除者:291名(291/368名 合格率:79.1%)
1科目免除者:95名(95/594名 合格率:16%)
3科目受験者:1461名(1461/9428名 合格率:15.5%)

第41回合格者数:820名(7.7%)
2科目免除者:229名(229/297名 合格率:77.1%)
1科目免除者:182名(182/661名 合格率:27.5%)
3科目受験者:409名(409/9737名 合格率:4.2%)

少し長くなったので解説は後篇に移らせていただきます。





通関士の道具

今回は通関士の日常使用している道具について紹介したいと思います。

1.シャーペン
インボイスに税番を記載したり、次で説明する「線引き」に使用します。

2.物差し
30cm程の物差しは、インボイス上の商品を税番毎に分割して分かりやすくするように、区切る為に使います。

3.電卓
金額、数量、重量などの計算をする為朝から晩まで使われます。

4.消しゴム
言わずもがなの使用用途ですね。

5.タリフ
ネットでも見る事ができますが、時間の関係も有り輸出入で一冊ずつ、計二冊各人に配布されています。

6.ルーペ
私の担当は繊維が多いので、生地の編み方や織り方など組成を確認する為に必要なものです。

7.指サック
書類をすばやく正確にめくる為に必要です。パソコンのキータッチに影響しないよう、バンド状の物を使っています。

通関士の仕事はIT化が進んでいるのではと思われますが、税番の選択や仕分けに関しては、上記のようなローテクな物が主流です。
しかし、そろばんから電卓、電卓からパソコンに代わってきているように、いつの日か上記のような道具は使われなくなるかもしれませんね。

2012年3月6日火曜日

通関士の現状その5

その4では通関士の確認を受けるには高い壁があることを書きました。
それではどの様にして通関士という職に付くのかということを私なりの意見として述べたいと思います。

方法その1:外回りの要員として採用される。
通関業者では毎日税関へ書類を持ち込んだり、貨物の検査立会をする為に内勤以外に外回り専門の人間を雇う事があります。一般的にこの役目は定年後再就職した年配の方や、通関部に配属された新人が担う事が多いのですが、最近はどの会社も新卒を余り採らないので、年配の方が辞められた際に、外部に求人を出す事があります。
必要なのは自動車免許ぐらいで、検査貨物が税関に到着するまでの待ち時間で、実際に様々に書類を見る事もできますし、税関ではいろいろな通関業者の人達と知り合いになることができます。
本人にやる気があり、通関士として適性があると会社に認められれば、内勤を任せられる事ももちろんあります。

方法その2:通関業者の他部署からの転属を狙う。
経験のない通関士資格者がいきなり通関部へ配属されるのは難しいと書きましたが、通関業者のほとんどは運送、倉庫、国際物流などの業務がメインで、その方面の求人は通関士の求人に比べると格段に多いです。
特に営業部門では通関士試験合格者は、未経験であっても優遇されます。
まずは他部署に入りこんで、社内で通関部への転属を狙うのもありだと思います。

方法その3:派遣社員として通関部へ派遣される。
多くの通関業者では派遣社員が活躍しており、中には通関士として税関長の確認を受けている人もいます。
ただ未経験者はちょっとつらいかもしれません。

いろいろと書きましたが、もちろんこれ以外にも通関士へ通じる道はあると思います。
せっかく苦労して試験に受かったのですから、通関士として確認を受ける日がくることを願っております。


通関士の現状その4

そんなこんなで最近は特にハードルの高い通関士試験ですが、苦労して試験に受かっても実際に通関士として税関の確認を受ける為には更に高い壁が立ちはだかります。

その高い壁とは、通関業者の通関部に配属される必要があるということです。
この場合正社員、派遣社員と雇用形態は問いませんが、少なくとも通関部に配属される必要があります。
通関士の求人については、京浜、中京、阪神地区を中心にそれなりにあるようです。ただほとんどの求人が通関士資格だけではなく、実務経験を求められるのがほとんどです。もし一つの求人に通関士資格はあるが実務経験無しの方と、通関士資格は無いものの実務経験がある方の応募があった場合は、実務経験者が選ばれることが多いと思われます。
これは実際どこの業者もギリギリの人員で回しているので、教える時間がほとんどないからです。
それから小さい業者などでは通関士の届け出は最低限に抑えて、通関士試験をパスしたものの、従業者としてしか
登録していないケースもあります。
ただやる仕事は同じなので、割り切れる方であればそういう選択もあるのではないでしょうか。


通関士の現状その3

従業者についてもう少しだけ。

この従業者について理解しておくことは、通関士試験を受ける方にとっても大事なことです。
というのも、試験科目の一部免除はこの従業者として5年経過することで、実務の一科目を免除、15年で関税法などの計二科目の試験が免除となるからです。
そんなこんなで通関業者の中には、実際には通関業務に携わっていないのに、従業者として税関へ登録し、最難関の通関実務の試験を免除させようとする所もあります。

ちなみに通関士試験の合格者数の三分の一強はこの一部科目免除の人達です。
ですから、科目免除無しの場合の合格率は全体で8%程度の合格率とすると、3科目受験者の合格率は4〜5%程度になると思われます。

依怙贔屓と感じられる方も居られると思いますが、近年合格率が下がっている通関士試験の唯一の攻略法と言ってもいいかもしれません。


2012年3月5日月曜日

ブログを始めるにあたって

通関士について試験に受かるまでのことはいろんなサイトで見る事ができるのですが、その後についてはどんな仕事で、どんな条件で働いているのかあまり詳しく書いてあるのは少ないように感じます。
これは通関士試験の合格者数に比べ、実際通関士として登録されている人数が少ないことも要因の一つだと思われます。
このブログでは通関士試験を受けられる方に、私が仕事を通して身につけたことや、守秘義務に違反しない範囲の情報提供を、既に通関士として働いている方には、このブログを通じて知識を高め合えるようアドバイスなど頂ければと思います。
ちなみに試験についての助言は出来かねます(今試験を受けても100%落ちる自信があります(-。-;)。
悪しからずご了承くださいm(_ _)m


自己紹介

簡単に自己紹介を。

関西の海貨業者で働いています。
現在の会社で在職中に通関士試験に受かり、配置転換で通関部に配属となりました。

現在通関士としては4年生の新米通関士です。

通関士の現状その2

その1では通関士とそれ以外の従業者(以後従業者)の人数について紹介しました。
では両者の違いとはなんなのかを説明したいと思います。

従業者として通関業務を行っているのはこのような方々です。

1.税関へ審査書類などを持ち込む、所謂外回りの方々
2.通関部に所属しているものの、通関士試験に合格していない(または受験していない)方々

この両者できることはほとんど変わりませんが、実務上大きな問題となるのが書類審査を行い判を押す行為と輸出入の申告等は通関士でないと出来ないことです(税関長から特別な許可を受けた者=限定した貨物の輸出入申告を除きます)。
説明は後日にしたいと思いますが、税関が通関業者に行う監査でもこの辺りは重点的にチェックされます。

通関士の現状その1

実務の紹介をする前に、自分の頭の整理も兼ねて、通関士に関わる数字について紹介したいと思います。

現在通関業従業者は15506人で、その内通関士として税関に登録されているのは7364人とその他が8144人となっています。(平成23年4月1日現在:税関ホームページより)
通関士に関してはご存知の通り、通関士試験に合格し、通関業者で通関業務に従事し、税関に確認を受けた者を指します。
ではその他の通関士以外の通関業従業者とはなんなのかと言いますと、通関士試験には合格していないものの、通関業務に従事する為に、税関に届け出を行った者を指します。

数字を見ても分かるように、ほとんどの通関業者では通関士とその他の従業者が席を並べて仕事をしています。



このブログについて

このブログでは通関士を生業とする方々や通関士の仕事に興味がある人を対象としていこうと思います。
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