2012年4月7日土曜日

AEO制度について

今回は近年財務省も力を入れているAEO制度についてです。

AEOとはAuthorized Economic Operatorの頭文字を取ったもので、諸外国と共に日本も力を入れている制度です。今のところ、

・特例輸入者
・特定輸出者
・特定保税承認者
・認定通関業者
・特定保税運送業者
・認定製造者

の6者があります。

特例輸入及び特定輸出制度は荷主を対象としており、以下、
特定保税承認者・・・保税倉庫
認定通関業者・・・通関業者
特定保税運送業者・・・運送業者
認定製造者・・・生産者

を対象とした制度です。

毎年のように制度について大小の変更がなされ、受験生泣かせの制度でもあります。
2012年の4月からは特例輸入者の保全担保の提供について、大幅な緩和措置が導入され条件を満たす大企業を中心に取得が進んでいくのではないかと思われます。

しかしながらそれ以外のAEO制度については、取得するまでの労力に比べ、まだまだ魅力に乏しいのが実情です。以下は個人的な見解。

・特例輸入者
AEOの中で一番メリットを感じられる制度です。何といっても輸入時に納税と切り離して貨物を引き取ることができる引取申告が魅力です。
引取申告とは納税申告と輸入申告を切り離して行うことができるもので、税額を確定するのに必要な評価書類などが揃っていなくても輸入することができます。引取申告をした際の納税申告の期限については、引取申告をした翌月末までとなっており、この期限を過ぎるとペナルティがある為、通常は引取と納税を同時に行うことが多いです(ほとんど区分1:即時許可となります)。
先に書いたように今まで多くの特例輸入者が保全担保を積んでいたのですが、この4月からの改正で条件が緩和され、担保を積まなくても申告できる企業が増えました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e
http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/h_tanpo.htm

・特定輸出者
保税地域に搬入することなく輸出許可を受けることができる、特定輸出申告制度がメインです。
主に自社倉庫、工場でのメーカーバンニングが対象とされていると思われます。
保税地域に搬入前に許可を受けることができますが、リードタイムにそれほど影響が出るのかというと???です。X線検査が減るぐらいと思われますが、特定輸出者を取れるぐらいの企業であれば、検査率も少ないでしょうし、年間で見てもどれぐらい差があるか疑問です。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e2
・特定保税承認者
税関長への届出だけで保税蔵置場を設置できる他、手数料の軽減、包括的な許可を受けることができるということで、保税倉庫を持つ業者で取得が進んでいます。

http://www.customs.go.jp/hozei/cp/index.htm

・特定保税運送業者
保税運送の個々の承認が不要、後述する特定委託輸出申告の貨物を運送することができます。
2012年4月の段階で全国で3社しか承認されていません。
この業界の特徴として、トラックにしてもコンテナにしても傭車を使うことが多く、多くの下請けを使っているので管理がなかなか難しいということもありますし、正直メリットが感じられません。

http://www.customs.go.jp/hozei/transporter/index.htm

・認定製造者
2010年から導入されていますが、取得したという話を聞いたことがありません。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/maker.htm

・認定通関業者
2012年の3月時点で全国で47者が認定されています。通関業会からの働きかけもあって、最近は条件を満たす通関業者の取得が進みつつあります。
メリットとしては3点あり、

1.特定委託輸入ができること
2.特定委託輸出ができること
3.申告関所の選択ができること

の3点です。

1の特定委託輸入は特例輸入制度の通関業者バージョンで、荷主が特例輸入者でなくても、引取申告など特例輸入申告と同様の申告ができます。
ただなんでもかんでも使える訳ではなく、リスクの割に通関業者にとってのメリットに乏しい為ほとんど使われていないようです。

2の特定委託輸出申告も上記と同様、特定輸出者と同様の事ができます。
しかしこちらの方は、貨物の運送を特定保税運送者にお願いしないといけないのですが、先程も書いたように全国で3社しかないため制度はあるが使えない制度となっています。

3の申告官署の選択制度は、通関業の許可を受けた本関管轄内で、予め届け出た本関及び近隣の税関中から申告官署選択し、その選択した官署で書類審査や貨物の検査などを一貫して行う事ができる制度で、同じ管轄の税関内であれば、営業所近くの税関を選択する事で、離れた場所にある税関へ行かなくても書類審査などができるようになります(ただし他官署にて開品検査を行う際は、書類審査を行った税関職員と共に他官署の開品検査場へ出向く必要があります)。
通常通関業者は税関の書類持ち込みや検査の為に1〜2人、外回り要員がいるのですが、その負担を減らす事ができる為、営業所の近くに税関がある場合、そのメリットも大きくなります。
実際航空貨物においては、成田と羽田にそれぞれ事業所を置かなくても、申告する事ができるようになったことで、大きなメリットを感じられるようになりました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/broker/index.htm


以上が現在の日本のAEOの概要ですが、まだまだ魅力に乏しいのは税関も分かっており、毎年聞き取り調査を行って制度の改善を図っているようです。

近年アメリカを筆頭に外国から入ってくる貨物の検査、取扱を厳重にする取り組みは日本を含め、諸外国の間に広がってくると思われます。このような場合AEOの相互認証を活用することによって、AEO取得者の貨物は簡易的な審査で済ますことができるようになることが予想されるので、ある程度体力のある会社ではAEOを取得する動きは今後活発になってくるものと思われます。


ちなみに認定通関業者からは、申告時に区分3が出た場合の検査率の低減と、区分2の書類審査の簡素化が要望されていますが、この先どうなる事か、ますます受験生を悩ますことになりそうです。

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