2012年5月17日木曜日

関税暫定措置法第8条(通称:暫8)の話:その1制度の概要

取るに足らない話が続いたのでここらで実務の話もしてみたいと思います。

通関業者でアパレルを扱っているのであれば、表題の関税暫定措置法第8条(通称:暫8)について、見聞きしている方もいるかと思われますが、今回はその話です。

予備知識として関税暫定措置法第8条とは、加工再輸入減税制度のことを指し、日本から外国へ原材料を輸出し、輸出許可の日から1年以内に製品として輸入される場合、製品に係る原材料価格相当分(いわゆる材料費+輸出にかかる経費(除く消費税))の関税を軽減する制度のことを指します。
減免税の対象となる製品は、革製のかばんや財布、服などの繊維製品、革製履物の甲、革製の自動車用腰かけの部分品があり、輸入するそれぞれの製品について使用できる原材料に決まり(縛り)があります。

この法律の趣旨としては、現在アパレル製品の輸入については、食品や汎用製品などと同様に国内産業の保護の為、おおよそ7~12%程度の関税が課されています。
しかし、諸外国特にアジアの人件費は日本とは比較にならないぐらい安く、また途上国においては経済の発展の初期段階として、多くの雇用を生み出すアパレル産業は重要な産業となることもあり、これ以上の関税を課すことで日本国内産業を守るのは難しい状況となっています。
そうした競争力の観点から日本では縫製工場の数が減り、縫製工場が減ることにより原材料となる生地や糸を提供する各企業の競争力まで削ぐことになる、そこで苦肉の策として考え出されたのが今回主題となる加工再輸入減税制度=関税暫定措置法第8条です。簡単に説明すると日本から輸出された原材料を使って、委託加工貿易を行うことで、その原材料分については関税を減税しますよ、という制度となっています。つまり日本の縫製工場は保護することはできないが、機能性繊維などの技術においては世界最先端の技術を持つ、日本の繊維産業を保護する為の法律とも言えます。

皆さんが買っている服の中にもこの暫8を用いて輸入された製品がありますが、タグの原産国表記については、縫製など最終的に製品にした国が表記されることになっている為、見分けることはできません。ただ、女性用の衣類やビジネススーツ、スポーツ用の多機能衣類やボタンや裏地、現地での入手が難しい物などは日本から輸出され、製品として輸入されることが多いようです。もちろん暫8を用いずに日本から原材料を輸出し、現地にて加工後通常輸入の形で流通している商品もあります(むしろこちらが主です)。

今では二国間や多国間でのEPAを用いることが増えてきましたが、現在日本にとって最大の貿易相手国であり、世界で最多の縫製工場を持つ中国との間にEPA等の締結がなされていないこともあり、まだしばらくこの暫定法は延長されると考えられます(2012年5月現在、2016年3月31日まで)。

0 件のコメント:

コメントを投稿

UA-29781445-1