2012年5月14日月曜日

通関士のこれから

通関士の未来について、先の事は誰にも分かりませんし、自分が今まさに通関士としてサラリーをもらっている為、贔屓目になるかもしれませんが、それも踏まえながら通関士としてこれから先の事を書いていきたいと思います。
通関士という仕事はこれから減っていく、若しくはなくなるのか、それとも職域が広がり更に発展していくのか、これは私の予想ですが、通関士の数は微減~現状維持しながらも職域を広げていくのではないかと考えています。

通関士の数が減っていく、即ちマイナス面に影響するのが、貿易の量の減少です。現状不況不況と言いながら長い目で見れば若干右肩上がりの昨今の貿易統計ですが、成長著しい東南アジアの台頭、日本の人口の減少など、輸出主体の経済活動が減っていくことは避けられないとでしょう。
通関業者の仕事は受動的な仕事である為、貿易量の減少は売上の減少に顕著に結びつき、その為現状でも通関業者の人員は少人数でやりくりしているのですが、顧客の奪い合いによる過当競争の結果として営業利益の減少なども重なり、更なる人件費削減の方向へ繋がるのは容易に想像できます。
またこれからは通関業者の合併、解散も避けられないのではないでしょうか。更にMOL、NYKなどが参加するアライアンスの航路再編に伴い本船の寄港地が減ることにより、地方港の通関業者などは特に厳しくなるものと思われます。

プラス面としては、税関自体が職員数を減らしている傾向もあり、更に通関士の数も減るとなると税収の2%を占める関税の収受、日本の経済指標となる貿易統計の質に影響し、経済活動へ悪影響を引き起こすことになるので、そういう点で一定数の通関業者及び通関士は必要になります。
人によってはEPA、TPPなど二国間、多国間の貿易協定により、極端に言うと関税がなくなることで通関士の仕事もなくなるという方も居られますが、そのような事は絶対あり得ないと断言できます。
アジアを中心としたEPAの進展によって輸入時関税がかからない事例は確かに増えてきております。しかし、通関士が行っている仕事は関税が有税だろうが無税だろうが全く変わりません。現状関税の有無に関わるのは、HS CODE、輸出国、特恵受益国、2国間及び多国間経済協定及び特殊関税(報復関税etc)などですが、通関士が行うのはそれら税番を適切に選択することであり、その後の細かい計算はNACCSがしてくれます。
逆に昔よりも貿易のやり方が多様化したことで、通関士に求められる知識は膨大なものとなっており、個々の通関士の質を高めることが今以上に求められることになるでしょう。

また通関士は通関業者に留まらず、商社や国際的な物流企業でも力を発揮する日がやってくるでと思います。輸出入の通関業務は今後通関業者を通さず、荷主自身で申告を行うことが増えてきます。これはAEO制度や昨年の保税搬入原則の改正などに見られるように、特に輸出において内陸地の拠点や倉庫を意識した法整備が進められていることからも明らかです。荷主の側も物流コストを以下に削るかを常に意識しているので、通関件数が多い荷主にとっては、自社通関をすることはコストカットに大きなプラスになります。そうなると通関業務の専門家である通関士経験者が、NACCSを用いて税番の選択や諸々の手続きを荷主の立場として行うようになるのではないかと思います。

いろいろと書いてみましたが、通関士の仕事は今後更に専門性を増し、通関業者に雇われる通関士としてはある程度の需要を満たし、荷主にとっては通関業務に詳しい人材がコストカットとコンプライアンスの遵守につながることで、必要性を増すと私は考えております。
望むべくは景気の回復と、輸出入の均衡を保ちつつ貿易量が増えていけば良いのですが、こればかりは考えたところでどうすることもできないので、日々研鑽しつつ、どのような状況でも必要とされる通関士としてのスキルを身に付けたいですね。

1 件のコメント:

  1. 興味深く読ませていだだきました。
    申告官署の自由化が検討されています。
    米国と同様に荷主で活躍できる時代が来るのでは
    ないでしょうか? 荷主企業の物流関係者より

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