2012年3月30日金曜日

関税・消費税立替問題その2

通関業者による関税・消費税立替問題の続きです。

長い間輸入時の関税・消費税の支払いは、NACCS口座を用いて行われてきました。
しかしこのNACCS口座というものは、前回説明したように前日までに入金した分しか口座に反映されません。輸入時の関税額は通常申告の直前にはっきりとした金額が分かるものなので、その時にもし口座の金額が不足していれば、例えその日に入金したとしても納税できるのは翌日になります。
荷主が扱っている商品にもよりますが、通常港に到着した貨物はできるだけ早く手元に持ってきたい、エンドユーザーへ納品したいというのが一般的で、時間制限無しでゆったりと通関、配送ということは稀です。
またNACCS専用口座というものは専用と言うだけあって、他の用途に使用することはできません。
手元資金に余裕の無い中小企業にとって、貴重なキャッシュを口座に常時用意しておくと言うことは非常に大きな負担となります。

そういう状況の中、次第に通関業者自身が自らNACCS口座を開設し、輸入申告時にかかる関税・消費税を一時立替、後日請求するという形が通関業者間の激しい顧客争奪の競争の中、提供するサービスとして一般的になり、現在までに至るのがいわゆる関税・消費税の立替問題です。

現在リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)の登場によって、上記のようなNACCS口座の持つ問題はクリアされました。
しかしこれとは別の理由で通関業者の立替問題は一向に改善されてないのが現状です。
その別の理由とは、単純に荷主の利便性、経済性の問題であり、つまり通関業者に関税・消費税を一時立替させることで金利負担を無くし、且つ手元資金を減らすことなく商売をすることができるのですから、その権利を自ら失うようなことはしたくないというのが荷主の本音です。
特に中小企業においては関税・消費税を立替することを条件に通関業者に仕事を回すということが当たり前のようになっています。

私たち通関業界の人間はこの問題を当たり前のようにあるものだと認識しています。しかし、よくよく考えてみると納税者に代わり税金を立て替えるという行為は当たり前のことなのでしょうか?

日本通関業連合会の調査によると、通関業者の立替金額は年額1兆円上ると推計されており、金利の負担、貸し倒れリスクなど通関業者に与えている影響は非常に大きなものです。
実はこの他にも通関業者が立て替えているものは多く、海上運賃、倉庫での荷役費用、トラックやコンテナの配送料など請求書にのる項目の多くは立替費用です。

ここまでは古くからある問題です。今注目されている新しい問題とは、今国会でさかんに議論されている消費税の問題です。
消費税が上がるということは、通関業者が立て替える費用が上がるということにつながります。この景気後退の昨今、立替費用の増大は中小通関業者にとっては死活問題足りえます。
政府はこの問題に対し、民間での契約ということを盾に介入しようとはしませんが、元はと言えば制度の不備が引き起こした問題なので、あるべき姿にするのが立法を行う政府としての役目ではないのでしょうか?

一部の大手業者は立て替える際に手数料を請求したり、立替そのものを拒否し、ダイレクト方式へ切り替えさせるなど行動を起こしているようですが、この問題は業界が横並びで行動を起こさなければ、改善することは難しいのではないかと私は思います。

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