2012年3月30日金曜日

関税・消費税立替問題その2

通関業者による関税・消費税立替問題の続きです。

長い間輸入時の関税・消費税の支払いは、NACCS口座を用いて行われてきました。
しかしこのNACCS口座というものは、前回説明したように前日までに入金した分しか口座に反映されません。輸入時の関税額は通常申告の直前にはっきりとした金額が分かるものなので、その時にもし口座の金額が不足していれば、例えその日に入金したとしても納税できるのは翌日になります。
荷主が扱っている商品にもよりますが、通常港に到着した貨物はできるだけ早く手元に持ってきたい、エンドユーザーへ納品したいというのが一般的で、時間制限無しでゆったりと通関、配送ということは稀です。
またNACCS専用口座というものは専用と言うだけあって、他の用途に使用することはできません。
手元資金に余裕の無い中小企業にとって、貴重なキャッシュを口座に常時用意しておくと言うことは非常に大きな負担となります。

そういう状況の中、次第に通関業者自身が自らNACCS口座を開設し、輸入申告時にかかる関税・消費税を一時立替、後日請求するという形が通関業者間の激しい顧客争奪の競争の中、提供するサービスとして一般的になり、現在までに至るのがいわゆる関税・消費税の立替問題です。

現在リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)の登場によって、上記のようなNACCS口座の持つ問題はクリアされました。
しかしこれとは別の理由で通関業者の立替問題は一向に改善されてないのが現状です。
その別の理由とは、単純に荷主の利便性、経済性の問題であり、つまり通関業者に関税・消費税を一時立替させることで金利負担を無くし、且つ手元資金を減らすことなく商売をすることができるのですから、その権利を自ら失うようなことはしたくないというのが荷主の本音です。
特に中小企業においては関税・消費税を立替することを条件に通関業者に仕事を回すということが当たり前のようになっています。

私たち通関業界の人間はこの問題を当たり前のようにあるものだと認識しています。しかし、よくよく考えてみると納税者に代わり税金を立て替えるという行為は当たり前のことなのでしょうか?

日本通関業連合会の調査によると、通関業者の立替金額は年額1兆円上ると推計されており、金利の負担、貸し倒れリスクなど通関業者に与えている影響は非常に大きなものです。
実はこの他にも通関業者が立て替えているものは多く、海上運賃、倉庫での荷役費用、トラックやコンテナの配送料など請求書にのる項目の多くは立替費用です。

ここまでは古くからある問題です。今注目されている新しい問題とは、今国会でさかんに議論されている消費税の問題です。
消費税が上がるということは、通関業者が立て替える費用が上がるということにつながります。この景気後退の昨今、立替費用の増大は中小通関業者にとっては死活問題足りえます。
政府はこの問題に対し、民間での契約ということを盾に介入しようとはしませんが、元はと言えば制度の不備が引き起こした問題なので、あるべき姿にするのが立法を行う政府としての役目ではないのでしょうか?

一部の大手業者は立て替える際に手数料を請求したり、立替そのものを拒否し、ダイレクト方式へ切り替えさせるなど行動を起こしているようですが、この問題は業界が横並びで行動を起こさなければ、改善することは難しいのではないかと私は思います。

2012年3月29日木曜日

関税・消費税立替問題その1

今回は古くて新しい話題でもある通関業者の関税及び消費税立替の問題についてです。

過去から現在に至るまで、通関業者を悩ませている大きな問題の一つがこの立替金の問題です。
輸入の許可を受けて外国貨物を引き取るには、輸入者は必要とする関税・消費税を納付するか担保を積む必要があります。近年特例輸入者による貨物の引取りと納税を分離して行える、特例輸入制度もありますが、今回の主題から外れるのでひとまずおいておきます。

基礎知識として関税・消費税の支払い方法について簡単に整理してみます。

2012年現在輸入時の関税・消費税支払い(担保)方法には下記の様なものがあります。

1.銀行、税関収納窓口への証券(小切手、国際の利札、郵便定額為替など)の提出
2.NACCS専用口座による引き落とし
3.延納(個別、包括、特例)、許可前引き取り承認制度(BP=Befor Permit)などによる担保の提供
4.MPN(マルチペイメントネットワーク)
5.リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)

1については輸入申告時に関税・消費税が確定すると、関税額・消費税額が記載された納付書を発行することができるので、この納付書と共に記載された金額を銀行へ収めるか、税関収納課に証券を添えて提出することで納税することができます。
個人輸入などではほぼこの方法での納税になります。申告の度に銀行、税関を行き来することになるので、通関業者においては緊急の場合を除いてほとんど利用されておりません。また税関収納課への直接の納税は、海貨においては私の知る限りかなり嫌がられます。

2の専用口座については、輸入者が事前に銀行に開設したNACCS専用の引落し口座から関税・消費税を納付する方法です。輸入申告の際NACCSに専用口座の番号を入力することで、輸入申告→審査終了後即時許可になります。
デメリットとしては、開設した銀行によって利用時間に制限がある(最大21時まで)、前日までの振り込みしか口座残高に反映されないなどがあります。

3の延納については、ある程度の資本がある会社は導入している方法です。ここでは包括延納方式について説明しますが、事前に担保を積むことで許可の日から3カ月後の末日まで関税・消費税の納付を延長することができます。使用方法は2の専用口座と同様にNACCSに必要事項を入力することで使用できます。
デメリットは担保を積む必要があること、担保額の上限を1円でも超えると使用できない(この場合納期限を延長している関税・消費税を納付することで使用できるようになります)などがあります。

4.MPNは比較的新しい納税方法で、輸入申告後に確定した関税・消費税の税額を通関業者が輸入者に連絡し、輸入者が必要金額をインターネットやATMなどで納付することで納税する方法です。
デメリットとしては、輸入者は通関業者などから納税に必要な金額の連絡を受け、自らインターネットなどを通して納付する必要があり、輸入件数が多いとそれだけ煩雑になります。

5.リアルタイム口座振替形式(ダイレクト形式)は一番新しい納税方法で、事前にNACCSと銀行で口座振替契約をすることで、一般の口座からその都度関税・消費税の引落が行われます。4のMPNと比べ、残高があれば自動的に納付されるので手間を省くことができ、2の専用口座に比べても、口座に必要な残高が残ってない場合でも振り込みを行うと、通常の口座なのですぐに残高に反映されます。
今のところ一番使いやすい方法です。


以上が基礎知識で、ここからが本題になります。

少し長くなったので次回へ。

2012年3月25日日曜日

海貨業者について

通関業を営んでいる会社はフォワーダーとしても活躍しており、そのほとんどが航空貨物混載業者、利用運送事業者(NVOCC = Non Vessel Operating Common Carrier)を兼務しています。
他にも保税区内に自社倉庫を構え、主に自社及び関係会社の外国貨物を取り扱う会社もありますが、ここでは私も所属する海貨業者について説明したいと思います。


まず海貨業者の意味について説明します。
海貨業者とは1951年に制定された港湾運送事業法に第2条の1に定義された一般港湾運送事業の"海運貨物取扱業"(荷主の委託を受けて行う個品限定運送)を略した物です。
簡単に言えば自らの責任で荷主⇔船社の貨物の受け渡しをする業者(元請け)のことを指します。
元々この法律はコンテナ化以前の在来船を対象にしていた為、艀(はしけ)などを利用しない、コンテナ船が主となってからは、1969年に港湾運送事業法が改正され、船社の貨物も扱えるようになり現在の海貨業(新海貨)の形態が整いました。
この上記貨物を取り扱うには海貨業のみでは一貫して行うことは不可能なので、多くの海貨業者が通関業、倉庫業、貨物利用運送事業の許可を受け、輸出入の仕事に携わっています。
またこうした業務を行う海貨業者を"乙仲"と慣例的に呼ばれております。

海貨業者がやっている仕事には下記のような物があります。

1.通関業
2.国際輸送業務、国際複合輸送業務
3.代理店業務
4.国内の運送業務
5.書類作成代行業務

などなどです。以下説明していきたいと思います。

1.通関業
他の所で説明しているので飛ばします。

2.国際輸送業務、国際複合輸送業務
荷主に代わり船社にBOOKINGを行い、B/L発行など自らの責任で外国との貨物輸送を取り行うNVOCC(利用運送事業者=船を持たない海上輸送者)業務の事。細かい部分はまた後日説明したいと思います。

3.代理店業務
外国の船会社、NVOCCと提携し貨物到着後のARRIVAL NOTICE(貨物到着案内)を発行し、運賃や到着後の取扱料を収受する業務です。

4.国内の運送業務
輸入許可を受けた貨物を保税区からエンドユーザーに配送したり、輸出許可後のコンテナ貨物を保税区からコンテナヤードに搬入したり、許可後の特定輸出申告貨物をコンテナヤードに搬入するまでの運送業務を荷主に代わり手配します。

5.書類作成代行業務
L/Cの銀行買取書類(ネゴ書類)を作成したり、荷主に代わりINVOICEやドックレシート(DOCK RECEIPT)の作成、商工会議所へ原産地証明書の発行などを行います。

ここにあげたのは多くの通関業者がやっている一部の仕事です。他にも検疫に必要な検査の手配を行ったり、展示会用のATAカルネの作成などその海貨業者が得意とする仕事を荷主に代わり行っています。
先に書いたようにほとんどの業者が通関業だけでは経営していくことは難しい為、今では通関業以外の業務で利益を上げられるよう水面下で戦いを繰り広げています。

しかし、そういう時代の流れでもなお通関業務は、各海貨業者の重要な業務となっています。
特に食品、化学、繊維など経験と深い知識が求められる分野の通関士が社内にいるいないでは、扱える貨物に制限が出ることもあり、優秀な人材は引く手数多なのが現状でもあります。

そういう私も諸先輩方のように知識と経験を日々磨き、積み重ねていきたいものです。

2012年3月19日月曜日

通関業者の役割:後編

それでは引き続き個人での輸入手続きについて。

1については同様です。

2.インボイス、パッキングリスト、B/L、ARRIVAL NOTICEを手に入れ、必要であれば保険証券も手に入れることができれば書類の準備は完了です。

3.上記の書類を揃えて、到着した貨物の輸入地を管轄する税関へ赴きます。

4.税関で用意される書類に必要事項を記載し、発生する関税、消費税を計算します。また必要であれば税関によって荷主立会いの元、検査が行われます。

5.関税、消費税の計算が終わると、納付書という税額が記載された書類を渡されるので、国税の収納ができる銀行へ行き、必要な税を納付した上で、収納印を納付書に押印してもらいます。

6.持ち帰った納付書を税関の収納課へ提出すると…おめでとうございます。無事貨物は輸入許可になりました。
しかしまだやる事は残っています。

7.ARRIVAL NOTICEを発行した代理店に赴き、日本到着までにかかった費用と、必要に応じてB/Lのオリジナルを提出し、D/O(デリバリーオーダー)を発行してもらいます。

8.貨物の到着した倉庫に向かい、D/Oを渡し貨物を引取ってやっと貨物はあなたの物になりました。

取り引き形態によっても違いますが、おおよそこのような流れです。

流れを見ると自分でもできそうな気もしますが、実際は保険の掛け方、代理店の場所、貨物の引取り場所など、通関業者であればすぐ分かることも、個人ではなかなか調べることができません。
よくあるのは貨物が日本に到着しているが、代理店から連絡が無く、気付いた時には高額な保管料が発生していたなどです。
上記の手続きは個人でやると早くても丸一日、書類不備などトラブルがあれば一週間はざらに必要になります。

これでは余りにも面倒なので、我々のような通関業者へ業務を委託し、必要な手数料(取扱料10000円程度、通関料は定められた金額以内)を支払うことで手間と時間を節約するのです。

通関業者では貨物の到着後、倉庫で貨物が確認でき次第申告を行い、おおよそではありますが半日から一日程度で貨物を引取り配送することができます。

そういう訳で多くの企業は通関業者へ業務を委託することで、手間と時間を省いているのです。

通関業者の役割:前編

今回は通関業者が果たす役割についてです。

通関業者の役割とは、
輸出入する貨物に必要な手続きを、代行し荷主より手に入れた書類を元に、適切な数量、金額、税番、税率などを選択、計算し、税関へ申告を行うことにあります。
もちろん営業的、マネジメント的な役割を担うこともありますが、ひとまずそれは置いておきます。

では上記の仕事は自分でも出来るのかというと、もちろん可能です。
大抵の税関には個人通関の窓口を設けてますし、大手の企業などでも自社通関を行う所が増えてきました。

そこで一般的な海上貨物の貨物の到着から輸入許可引取りまでの流れを通関業者に委託した場合と、個人でやる場合に分けて説明したいと思います。

通関業者に委託した場合
1.輸出国の荷出人(SHIPPER)より貨物の船積みの完了連絡と共に、インボイス及びパッキングリストがメールやファックスで送られてくる。またB/L(船荷証券)がEMSやクーリエ(DHLなど)の業者を通じ荷主に送られる。

2.荷主は受け取ったインボイス、パッキングリスト、保険の明細などを業務を委託した通関業者に送り、更に貨物引取りに必要な量のB/Lのオリジナルを送付する。

3.貨物が輸入地に到着する前に、ARRIVAL NOTICE(貨物の到着案内及び請求明細)が送られてくるので、通関業者へ送付する。

4.貨物が輸入地に到着、通関業者は受け取った書類を元に税関への申告準備をし、同時にARRIVAL NOTICEの発行会社にB/Lの差し入れ、費用の支払いを行い貨物の引取り準備をする。

5.倉庫にて該当貨物の確認後、輸入申告。税関にて審査後、必要な関税、消費税を納め、輸入許可を受ける。

6.通関業者は荷主の指定した送り先に到着するよう配送車両を手配し、倉庫から貨物の集荷、配送を行う。

7.後日通関業者より立て替えた費用や請求書(海上運賃、手数料など)が送られてくる。

これを個人でやるとどうなるのかは次回に。




2012年3月16日金曜日

通関士の現場:年齢構成

今回は通関士の働く現場がどのような状態なのか、私の主観を元に紹介したいと思います。

先ずは年齢構成から

60〜50才
このぐらいの年齢の方も今なお現役でばりばり働いています。高度成長期の忙しい時代を支えた世代で、商品知識の幅は実際の経験に裏付けされたものがあり、中には輸出入のタリフが全て頭の中に入っているかのような凄まじい方もいます。
反面パソコンやNACCSは苦手で、NACCS連動の他法令や、入出力作業は中堅、若手に任せることが多いです。
定年退職に伴い知識の継承にどこの業者も頭を悩ませています。

50〜40才
管理職の中心となる世代です。特定の分野に強いプロフェッショナルもちらほらいます。
このぐらいの年代の方は油も乗り切っていろいろな場面で活躍されているのではないでしょうか。

40〜30才
私のような他部署から異動になった者や、入社から通関部一筋の人など、中堅から初心者まで幅広い人間がいます。多くの職場で実務の中心を担っている世代です。

30〜20才
通関士試験の合格率の低下、就職氷河期など不遇な世代です。
余り姿を見かけません(涙)

一概には言えませんが、多くの職場が団塊の世代退職に伴う知識の継承に頭を悩ませているようです。
その為欠員の補充にはどうしても経験者を選ぶ傾向はありますが、経験者、特にスキルの高い方はなかなか見つからないので、未経験者の方にも十分チャンスはあると思います。

ここで紹介したのは、私の主観なので参考程度にして下さい。
もちろんもっと若手が多い通関業者や逆に数年以上採用をしないで、限られた人間でやりくりしている業者もあると思いますので。

2012年3月15日木曜日

通関部に配属されてからのこと

前回通関士の確認について記載しましたが、多くの通関士が確認の前に、既に通関部で働く事になると思います。

そこで今回は通関部に配属されてから最初にやる仕事について書いていきたいと思います。

通関の日常業務はかなり大雑把に書くと、

1.申告書類作成
2.NACCSへの入力
3.申告控と実際の書類(INVOICE/PACKING LIST、他資料など)をチェック
4.申告
5.審査区分によって区分2(書類審査)、区分3(貨物検査)の場合は、税関へ書類を提出する。
6.許可

という流れになります。

初心者の場合まず任されるのは、このうち2と5にあたる、NACCSへの入力と税関への審査書類の持ち込み業務だと思います。
通関の仕事は限られた時間内にどれだけ早く且つ正確に申告し、許可を得る事にあるので、単純作業ではありますが、この二つの仕事は毎日の業務でも非常に重要なものです。
特にこれから通関士を目指そうという方は、ブラインドタッチができるよう事前に練習しておいた方が良いと思います。
もちろんブラインドタッチができるという事は、面接の際でも聞かれるので早く正確に入力できる方は、特別な知識がなくても即戦力の人材とみなされます。

2週間程度タイピングソフトで練習すれば形ぐらいにはなります。後はNACCSへの入力をし続ければだんだん早くなるので、苦手な方は練習して本番に備えましょう。





2012年3月13日火曜日

通関士の確認を受ける為に

通関士の試験に合格し、通関業者の通関部に配属されると晴れて通関士の確認を受ける...前にしなければいけない事があります。

それは各地の通関士部会が催す講習に参加する事です。
通関士部会については別の項目で詳しく説明したいと思うので、今回についてはさらりと説明しますが、各地の通関業者が参加している通関士の連合体の様なものです。

その通関士部会が開催する講習に参加し、修了書と共に次に挙げる必要書類を税関に提出することで、無事通関士としての確認を受ける事ができます。

必要書類
・通関士確認届(税関様式:B-1320)
・通関試験合格証書の写し
・身分証明書(各市町村で発行)
・登記されていないことの証明書(法務局で発行)
・履歴書
・宣誓書(税関様式:B-1080)
・写真2枚
この講習は通関士の確認を受ける人だけではなく、今まで何回か説明した従業者の方についても受講する必要があります。

内容については5日間9時〜5時まで、基本的なおさらいや、輸出入書類の作成方法、税関職員からの社会悪物品の統計や取締りの取り組みについての説明など、なかなか為になる内容となっております。

この講習の修了書と定められた必要書類を提出してから2週間程度で通関士証票が出来上がります。

ただし、この講習は通関士試験の合格発表後しばらくしてから催されるので、タイミングが合わず受講できない場合は、後に講習に参加することを条件に通関士として税関長の確認を受けることができます。

2012年3月11日日曜日

通関士試験の合格率について:後篇

前回3科目受験者の実際の合格率を計算してみました。

正直な話一部科目免除者と3科目受験者では合格率はもちろん、試験にかける時間なども考えると不公平な感じはします。ただ、この一部科目免除者は3科目受験者の競争相手ではありません。この人たちは違うステージに立っているという事実だけがあるのです。

1科目免除者は5年の従業者登録(または公務員特例)、2科目免除者は15年となっています。
この人たちはのほとんどは日常的に通関業務をこなしており、ある一定の水準の仕事をしている人たちです。例えその年の試験に受からなくても、次の年も同じ条件で受験することができます。
3科目受験者には、学生、通関業者への転職/就職を考える人、貿易関係職についている人、通関部に所属しているが試験に合格していない人、資格コレクターの人などなどいろいろな人がいると思います。
受験者の内のどれだけの人が日々試験に向けて学習しているかは分かりませんが、3科目受験者の実際の合格率は発表されているものより低いということを頭に入れて、日々の学習を進めていただければと良いのではないでしょうか。


通関士試験の豆知識その1
合格発表はweb官報が一番早いです。受験番号と氏名が合格発表当日に報告されます。
http://kanpou.npb.go.jp/

通関士試験の豆知識その2
2科目免除合格者の名前に注目すると、税関所長や税関長の名前を時に見つけることがあるかもしれません。

例年実務の最終10問題で合格数を調整しているようです。今年度はどうなることか、受験者の皆さんは法改正も踏まえ日々勉強に励んでください。

2012年3月10日土曜日

通関士試験の合格率について:前篇

通関士試験の合格率については、第40回(平成18年度)に回答方式が全てマークシートに変わってからは、

第40回:7.0%
第41回:7.7%
第42回:17.8%
第43回:7.8%
第44回:9.8%
第45回:9.9%

と、第42回を除いては軒並み10%以下となっています。
問題内容については記述式の時の方が難しかった、いや本来問題の難しさは変わっていないなど、過去の合格者やいろいろな通関士試験対策本やサイトで意見が出ていますが、受験者数が10000人辺りでこの合格率が続くということは、単純に過去よりも難しくなっているのだと私は思います。

しかもこの合格率は一部科目免除を受けた人も含まれており、3科目受験者だけの合格率を見ると更に数字は低くなるということを以前書かせていただきました。
では、具体的に3科目受験者の合格率はいくつなのでしょうか?

それでは2011年に行われた第45回の試験を解析してみたいと思います。
http://www.customs.go.jp/tsukanshi/45_shiken/45shiken_kekka.htm

受験者数:9131人
合格者数:901人
合格率:9.9%

これが発表されている数字です。では同ページに記載のある一部科目免除者の数字を抜き出してみます。

2科目免除:173人
1科目免除:606人

となっております。

ここでは一部試験免除者の合格率の数字は記載されていないので、以下の合格者の発表ページを参照してみます。
http://www.customs.go.jp/tsukanshi/45_shiken/45shiken_gohkaku.htm

合格者が受験番号順に記載されているのがお分かりかと思います。
よくよく注目してみると、1000番台、2000番台の受験番号は合格者の番号がつまっており、3000番以上は間隔が空いているのが分かります。

この内1000番台は、2科目免除者、2000番台は、1科目免除でそれ以上は3科目受験者ということが推測されます。それを元に各条件で受験した3者の合格人数が以下の通りになります。

2科目免除者:133/173名(合格率:76.9%)
1科目免除者:128/606名(合格率:21.1%)
3科目受験者:640/8352名(合格率:7.7%)

純粋に3科目受験者だけで考えると、7.7%という数字になりました。それと同時に2科目免除者の脅威の合格率がお分かりかと思います。

もう少し整理してみると、
一部科目免除者の合格占有率:261/901名(29%)
3科目受験者の合格占有率:      640/901名(71%)

ということが分かります。同様に45回以前の数字を計算すると、

第44回合格者数:929名(9.8%)
2科目免除者:167名(167/246名 合格率:67.9%)
1科目免除者:83名(83/571名 合格率:14.5%)
3科目受験者:679名(679/8673名 合格率:7.8%)

第43回合格者数:807名(7.8%)
2科目免除者:234名(234/321名 合格率:72.9%)
1科目免除者:107名(107/586名 合格率:18.3%)
3科目受験者:466名(466/9460名 合格率:4.9%)

第42回合格者数:1847名(17.8%)
2科目免除者:291名(291/368名 合格率:79.1%)
1科目免除者:95名(95/594名 合格率:16%)
3科目受験者:1461名(1461/9428名 合格率:15.5%)

第41回合格者数:820名(7.7%)
2科目免除者:229名(229/297名 合格率:77.1%)
1科目免除者:182名(182/661名 合格率:27.5%)
3科目受験者:409名(409/9737名 合格率:4.2%)

少し長くなったので解説は後篇に移らせていただきます。





通関士の道具

今回は通関士の日常使用している道具について紹介したいと思います。

1.シャーペン
インボイスに税番を記載したり、次で説明する「線引き」に使用します。

2.物差し
30cm程の物差しは、インボイス上の商品を税番毎に分割して分かりやすくするように、区切る為に使います。

3.電卓
金額、数量、重量などの計算をする為朝から晩まで使われます。

4.消しゴム
言わずもがなの使用用途ですね。

5.タリフ
ネットでも見る事ができますが、時間の関係も有り輸出入で一冊ずつ、計二冊各人に配布されています。

6.ルーペ
私の担当は繊維が多いので、生地の編み方や織り方など組成を確認する為に必要なものです。

7.指サック
書類をすばやく正確にめくる為に必要です。パソコンのキータッチに影響しないよう、バンド状の物を使っています。

通関士の仕事はIT化が進んでいるのではと思われますが、税番の選択や仕分けに関しては、上記のようなローテクな物が主流です。
しかし、そろばんから電卓、電卓からパソコンに代わってきているように、いつの日か上記のような道具は使われなくなるかもしれませんね。

2012年3月6日火曜日

通関士の現状その5

その4では通関士の確認を受けるには高い壁があることを書きました。
それではどの様にして通関士という職に付くのかということを私なりの意見として述べたいと思います。

方法その1:外回りの要員として採用される。
通関業者では毎日税関へ書類を持ち込んだり、貨物の検査立会をする為に内勤以外に外回り専門の人間を雇う事があります。一般的にこの役目は定年後再就職した年配の方や、通関部に配属された新人が担う事が多いのですが、最近はどの会社も新卒を余り採らないので、年配の方が辞められた際に、外部に求人を出す事があります。
必要なのは自動車免許ぐらいで、検査貨物が税関に到着するまでの待ち時間で、実際に様々に書類を見る事もできますし、税関ではいろいろな通関業者の人達と知り合いになることができます。
本人にやる気があり、通関士として適性があると会社に認められれば、内勤を任せられる事ももちろんあります。

方法その2:通関業者の他部署からの転属を狙う。
経験のない通関士資格者がいきなり通関部へ配属されるのは難しいと書きましたが、通関業者のほとんどは運送、倉庫、国際物流などの業務がメインで、その方面の求人は通関士の求人に比べると格段に多いです。
特に営業部門では通関士試験合格者は、未経験であっても優遇されます。
まずは他部署に入りこんで、社内で通関部への転属を狙うのもありだと思います。

方法その3:派遣社員として通関部へ派遣される。
多くの通関業者では派遣社員が活躍しており、中には通関士として税関長の確認を受けている人もいます。
ただ未経験者はちょっとつらいかもしれません。

いろいろと書きましたが、もちろんこれ以外にも通関士へ通じる道はあると思います。
せっかく苦労して試験に受かったのですから、通関士として確認を受ける日がくることを願っております。


通関士の現状その4

そんなこんなで最近は特にハードルの高い通関士試験ですが、苦労して試験に受かっても実際に通関士として税関の確認を受ける為には更に高い壁が立ちはだかります。

その高い壁とは、通関業者の通関部に配属される必要があるということです。
この場合正社員、派遣社員と雇用形態は問いませんが、少なくとも通関部に配属される必要があります。
通関士の求人については、京浜、中京、阪神地区を中心にそれなりにあるようです。ただほとんどの求人が通関士資格だけではなく、実務経験を求められるのがほとんどです。もし一つの求人に通関士資格はあるが実務経験無しの方と、通関士資格は無いものの実務経験がある方の応募があった場合は、実務経験者が選ばれることが多いと思われます。
これは実際どこの業者もギリギリの人員で回しているので、教える時間がほとんどないからです。
それから小さい業者などでは通関士の届け出は最低限に抑えて、通関士試験をパスしたものの、従業者としてしか
登録していないケースもあります。
ただやる仕事は同じなので、割り切れる方であればそういう選択もあるのではないでしょうか。


通関士の現状その3

従業者についてもう少しだけ。

この従業者について理解しておくことは、通関士試験を受ける方にとっても大事なことです。
というのも、試験科目の一部免除はこの従業者として5年経過することで、実務の一科目を免除、15年で関税法などの計二科目の試験が免除となるからです。
そんなこんなで通関業者の中には、実際には通関業務に携わっていないのに、従業者として税関へ登録し、最難関の通関実務の試験を免除させようとする所もあります。

ちなみに通関士試験の合格者数の三分の一強はこの一部科目免除の人達です。
ですから、科目免除無しの場合の合格率は全体で8%程度の合格率とすると、3科目受験者の合格率は4〜5%程度になると思われます。

依怙贔屓と感じられる方も居られると思いますが、近年合格率が下がっている通関士試験の唯一の攻略法と言ってもいいかもしれません。


2012年3月5日月曜日

ブログを始めるにあたって

通関士について試験に受かるまでのことはいろんなサイトで見る事ができるのですが、その後についてはどんな仕事で、どんな条件で働いているのかあまり詳しく書いてあるのは少ないように感じます。
これは通関士試験の合格者数に比べ、実際通関士として登録されている人数が少ないことも要因の一つだと思われます。
このブログでは通関士試験を受けられる方に、私が仕事を通して身につけたことや、守秘義務に違反しない範囲の情報提供を、既に通関士として働いている方には、このブログを通じて知識を高め合えるようアドバイスなど頂ければと思います。
ちなみに試験についての助言は出来かねます(今試験を受けても100%落ちる自信があります(-。-;)。
悪しからずご了承くださいm(_ _)m


自己紹介

簡単に自己紹介を。

関西の海貨業者で働いています。
現在の会社で在職中に通関士試験に受かり、配置転換で通関部に配属となりました。

現在通関士としては4年生の新米通関士です。

通関士の現状その2

その1では通関士とそれ以外の従業者(以後従業者)の人数について紹介しました。
では両者の違いとはなんなのかを説明したいと思います。

従業者として通関業務を行っているのはこのような方々です。

1.税関へ審査書類などを持ち込む、所謂外回りの方々
2.通関部に所属しているものの、通関士試験に合格していない(または受験していない)方々

この両者できることはほとんど変わりませんが、実務上大きな問題となるのが書類審査を行い判を押す行為と輸出入の申告等は通関士でないと出来ないことです(税関長から特別な許可を受けた者=限定した貨物の輸出入申告を除きます)。
説明は後日にしたいと思いますが、税関が通関業者に行う監査でもこの辺りは重点的にチェックされます。

通関士の現状その1

実務の紹介をする前に、自分の頭の整理も兼ねて、通関士に関わる数字について紹介したいと思います。

現在通関業従業者は15506人で、その内通関士として税関に登録されているのは7364人とその他が8144人となっています。(平成23年4月1日現在:税関ホームページより)
通関士に関してはご存知の通り、通関士試験に合格し、通関業者で通関業務に従事し、税関に確認を受けた者を指します。
ではその他の通関士以外の通関業従業者とはなんなのかと言いますと、通関士試験には合格していないものの、通関業務に従事する為に、税関に届け出を行った者を指します。

数字を見ても分かるように、ほとんどの通関業者では通関士とその他の従業者が席を並べて仕事をしています。



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このブログでは通関士を生業とする方々や通関士の仕事に興味がある人を対象としていこうと思います。
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