2012年4月28日土曜日

繁忙期終了

今年もゴールデンウィーク前の繁忙期が終わりました。
扱っている物にもよりますが、このゴールデンウィーク前と、お盆の前それからクリスマスの週が我々の業界の繁忙期です。
AIRだとボジョレーとかもあるみたいですが、この時期は休みの為カット日が軒並み前倒しになるので普段の3倍以上の仕事を連日こなすことになります。

場合によっては日が変わるまで仕事をすることもありますが、今年に関しては例年程ではなかったです。まだ2日残っているので油断は禁物ですが、ひとまず3連休ゆっくり過ごそうかと思います。

2012年4月23日月曜日

税関と通関士

今回は通関士として働く上で毎日のようにやり取りする事になる税関について、身近な所で紹介したいと思います。

通関士の日常業務は、主に荷主より委託された貨物の輸出入の申告ですが、その申告が正しく行われているかどうかをチェックするのが税関の重要な役割の一つです。

輸出については、貿易統計の材料となる統計品目番号や数量、金額が正しいか、輸出貿易管理令や他法令に関わる貨物かどうかの確認を行い、輸入については言わずと知れた適正な関税、消費税の徴収や、EPA、暫定8条等減免税の審査を通関業者から提出された書類を元に行っています。


NACCSを用いて輸出入申告を行い、

区分1=即時許可
区分2=書類審査
区分3=貨物検査

の区分が出ると、区分1の即時許可以外は税関窓口に書類を提出し、税関職員に申告内容が誤っていないか確認を受け、特に申告内容に問題がなければ許可になります。
この書類審査や貨物の開品検査を行うのが我々通関業者が一般的にラインと呼んでいる税関職員です。ほぼ毎日のように書類の内容について質問に答えたり、ちょっとした間違いを訂正する際にお世話になっています。

またラインでは解決できない込み入った問題を相談する統括部門、X線検査時の検査部、コンテナヤードに搬入したコンテナ貨物や、保税区内に蔵置された貨物についてなんらかの理由で動かしたり、中を見たり、サンプルを持ち出す際に調整を行うには保税部や監視部と、新商品などで実績が無く税番がはっきりとしない場合は関税監査官、EPAや特恵税率適用の為の原産地証明書や原産地基準の確認を行う原産地調査官、最近ではAEO専門の部署も整備され、時と場合によって話をする部や担当官が違います(上記の部門は港によって多少違います)。

また例年税関では7月に人事異動があり、どの職員も2~3年周期で他部署へ異動する為、例年この時期前後で審査の傾向が変わるのも悩ましいところです。
税関職員も通関士も法の下に荷主より委託された貨物、書類を審査しているのですが、法に明確に記載されていない事項や細部については、その税関職員の匙加減というのが実情です。
また通関業者は税番についても同じ品物でも港や申告官署によって違う税番を用いたり、その申告官署の傾向に合わせ税番の使い分けをしています。

と言うのも、申告書類の間違いを税関に指摘され訂正を行うと"非違・誤謬"としてカウントされ、件数によっては税関より改善命令を出される為、どの通関業者も1件でも訂正の件数を減らそうと日々努力しています。

通関士の専門性とは何か?との問いに対し、対税関との折衝という答えはどの本にも書かれていませんが、私はこの折衝能力は優秀な通関士の条件だと思います。

2012年4月16日月曜日

閑話休題

このブログは主に通勤中の頭が冴えている時に書いています。
最初の方は頭に入っている知識でもネタをポンポンと書いていけたのですが、内容が込み入ったものになるとそういう訳にもいかず、いろいろと下調べをして時間のある週末に更新しています。
あんまり詳しく書き過ぎると、話が長くなりますし、また自分自身そこまで深く書けるだけの能力もない為、内容的には中途半端なものになってる感もありますが、とりあえず続けて書き綴るのを目的としているので、今は頭の中に入っている物を定期的に書き続けて、それが出し尽くした後に新しい知識をインプットして、吐き出すことを繰り返す事で新しい知識を身に付けようと考えています。
そういう訳で、話のタイトルに一貫性がなく、内容も中途半端な感がありますが、コンテンツが十分に貯まったら内容を整理してホームページなどの形で紹介できればと考えています。

そういう訳で、お見苦しい部分もあるかと思いますが御容赦下さい。
また何かご意見、ご感想などがあれば、メール頂けると幸いです。

できるだけ長く続けたいと思っているので、ほそぼそと末長くお付き合い下さい。

2012年4月15日日曜日

通関士の毎日

通関士の毎日の仕事は、どこも大体そうだと思うのですが、未経験の方が想像しているようなものに比べとても地味なものです。
シャーペン片手に物差しを書類にあてて、税番毎に区切り、数量や金額を計算し、NACCSへ入力、入力内容を確認して輸出入の申告を行う、毎日がほぼこの作業の繰り返しです。
会話する相手は税関のラインと呼ばれる部門の担当者か社内の営業で、お客さんと話す事もあまりありません。また、人の少ない通関業者では、通関士がコンテナドレージの手配や、D/Oの差し入れをする事もあります。

こう書いてみるといかにもつまらなそうな仕事に見えるのですが、この仕事の魅力は何と言ってもその奥深さにあると思います。一度書類を手にすると少なくとも申告書の作成までは自分一人でしなければなりません。そしてその申告書作成のスピード、正確さが明確に自分自身の能力を反映し、他の通関士との比較材料にもなります。
しかし、ただ早いだけでもいけません。関税法や通関業法、輸出貿易管理令、食品衛生法、高圧ガス法...etc、輸出入を円滑に行うには、膨大なあらゆる法知識が必要であり、また統計品目番号の決定には、細心の注意を払い決定することが必要とされます。


また法律は毎年のように大小改正される為、常に最新の法知識を頭に入れておかなければいけません。2国間のEPAが発行になるたびに、原産地規則は?、デミニマスルールの適用は?など他国との細かなルールの違いを知らなければ、いざという時大変な失敗をしてしまいます。


知識と経験とスピードと正確性、個の力は間違いなく大事なものですが、良い仕事をしていくには個の集合体のチームの力が絶対不可欠となります。一人で分からないことも皆で考える中で答えを導くことができますし、例え答えが分からなくてもなんらかのヒントを得ることはできます。

通関士は毎日の繰り返しの仕事の中で、ちょっとした発見を積み重ね経験を積んでいきます。
こうした平凡な積み重ねと繰り返しの仕事が明日の糧となる、皆が皆そう思うとは限りませんが、少なくとも私はそういう風に日々仕事に取り組んでいます。


2012年4月7日土曜日

AEO制度について

今回は近年財務省も力を入れているAEO制度についてです。

AEOとはAuthorized Economic Operatorの頭文字を取ったもので、諸外国と共に日本も力を入れている制度です。今のところ、

・特例輸入者
・特定輸出者
・特定保税承認者
・認定通関業者
・特定保税運送業者
・認定製造者

の6者があります。

特例輸入及び特定輸出制度は荷主を対象としており、以下、
特定保税承認者・・・保税倉庫
認定通関業者・・・通関業者
特定保税運送業者・・・運送業者
認定製造者・・・生産者

を対象とした制度です。

毎年のように制度について大小の変更がなされ、受験生泣かせの制度でもあります。
2012年の4月からは特例輸入者の保全担保の提供について、大幅な緩和措置が導入され条件を満たす大企業を中心に取得が進んでいくのではないかと思われます。

しかしながらそれ以外のAEO制度については、取得するまでの労力に比べ、まだまだ魅力に乏しいのが実情です。以下は個人的な見解。

・特例輸入者
AEOの中で一番メリットを感じられる制度です。何といっても輸入時に納税と切り離して貨物を引き取ることができる引取申告が魅力です。
引取申告とは納税申告と輸入申告を切り離して行うことができるもので、税額を確定するのに必要な評価書類などが揃っていなくても輸入することができます。引取申告をした際の納税申告の期限については、引取申告をした翌月末までとなっており、この期限を過ぎるとペナルティがある為、通常は引取と納税を同時に行うことが多いです(ほとんど区分1:即時許可となります)。
先に書いたように今まで多くの特例輸入者が保全担保を積んでいたのですが、この4月からの改正で条件が緩和され、担保を積まなくても申告できる企業が増えました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e
http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/h_tanpo.htm

・特定輸出者
保税地域に搬入することなく輸出許可を受けることができる、特定輸出申告制度がメインです。
主に自社倉庫、工場でのメーカーバンニングが対象とされていると思われます。
保税地域に搬入前に許可を受けることができますが、リードタイムにそれほど影響が出るのかというと???です。X線検査が減るぐらいと思われますが、特定輸出者を取れるぐらいの企業であれば、検査率も少ないでしょうし、年間で見てもどれぐらい差があるか疑問です。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/index.htm#e2
・特定保税承認者
税関長への届出だけで保税蔵置場を設置できる他、手数料の軽減、包括的な許可を受けることができるということで、保税倉庫を持つ業者で取得が進んでいます。

http://www.customs.go.jp/hozei/cp/index.htm

・特定保税運送業者
保税運送の個々の承認が不要、後述する特定委託輸出申告の貨物を運送することができます。
2012年4月の段階で全国で3社しか承認されていません。
この業界の特徴として、トラックにしてもコンテナにしても傭車を使うことが多く、多くの下請けを使っているので管理がなかなか難しいということもありますし、正直メリットが感じられません。

http://www.customs.go.jp/hozei/transporter/index.htm

・認定製造者
2010年から導入されていますが、取得したという話を聞いたことがありません。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/maker.htm

・認定通関業者
2012年の3月時点で全国で47者が認定されています。通関業会からの働きかけもあって、最近は条件を満たす通関業者の取得が進みつつあります。
メリットとしては3点あり、

1.特定委託輸入ができること
2.特定委託輸出ができること
3.申告関所の選択ができること

の3点です。

1の特定委託輸入は特例輸入制度の通関業者バージョンで、荷主が特例輸入者でなくても、引取申告など特例輸入申告と同様の申告ができます。
ただなんでもかんでも使える訳ではなく、リスクの割に通関業者にとってのメリットに乏しい為ほとんど使われていないようです。

2の特定委託輸出申告も上記と同様、特定輸出者と同様の事ができます。
しかしこちらの方は、貨物の運送を特定保税運送者にお願いしないといけないのですが、先程も書いたように全国で3社しかないため制度はあるが使えない制度となっています。

3の申告官署の選択制度は、通関業の許可を受けた本関管轄内で、予め届け出た本関及び近隣の税関中から申告官署選択し、その選択した官署で書類審査や貨物の検査などを一貫して行う事ができる制度で、同じ管轄の税関内であれば、営業所近くの税関を選択する事で、離れた場所にある税関へ行かなくても書類審査などができるようになります(ただし他官署にて開品検査を行う際は、書類審査を行った税関職員と共に他官署の開品検査場へ出向く必要があります)。
通常通関業者は税関の書類持ち込みや検査の為に1〜2人、外回り要員がいるのですが、その負担を減らす事ができる為、営業所の近くに税関がある場合、そのメリットも大きくなります。
実際航空貨物においては、成田と羽田にそれぞれ事業所を置かなくても、申告する事ができるようになったことで、大きなメリットを感じられるようになりました。

http://www.customs.go.jp/zeikan/seido/aeo/broker/index.htm


以上が現在の日本のAEOの概要ですが、まだまだ魅力に乏しいのは税関も分かっており、毎年聞き取り調査を行って制度の改善を図っているようです。

近年アメリカを筆頭に外国から入ってくる貨物の検査、取扱を厳重にする取り組みは日本を含め、諸外国の間に広がってくると思われます。このような場合AEOの相互認証を活用することによって、AEO取得者の貨物は簡易的な審査で済ますことができるようになることが予想されるので、ある程度体力のある会社ではAEOを取得する動きは今後活発になってくるものと思われます。


ちなみに認定通関業者からは、申告時に区分3が出た場合の検査率の低減と、区分2の書類審査の簡素化が要望されていますが、この先どうなる事か、ますます受験生を悩ますことになりそうです。
UA-29781445-1